これぞヴィンテージの風味、現代に甦った「蔵囲」昆布

日本の味は昆布だしとともに(後篇)

2013.11.29(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要

 和食の基本として“だし”にも使われる昆布の歩んできた道をたどっている。前篇では、和食の源流にある精進料理や懐石料理を昆布だしが特徴づけたことや、北海道で採れた昆布が「昆布ロード」とも呼ばれる日本海の経路で日本各地へ広まったことなどを見てきた。

 この昆布ロードの要衝である福井県敦賀に構える老舗昆布問屋が「奥井海生堂」である。前篇に続き、4代目の奥井隆氏に話を聞く。この老舗昆布問屋がいまも実践している「蔵囲(くらがこい)」という昆布の加工法に焦点を当ててみたい。伝統的なこの加工法に、現代の科学的視点も注がれているという。

ワインの葡萄と同様、収穫地が重要

 日本国内における昆布の主産地は北海道だ。北海道の中でも産地により昆布は分類されている。北海道北部の日本海に浮かぶ利尻島や礼文島から宗谷岬を経てオホーツク海沿岸にわたる地域で採れるのが「利尻昆布」。襟裳岬から西に室蘭のあたりまでで採れるのは「日高昆布」。知床半島の東側の沖で採れるのは「羅臼昆布」だ。ほかにも、根室から釧路にかけての沿岸で採れる「長昆布」や、函館半島の東岸で採れる「真昆布」などがある。

 さらに、それぞれの昆布の味などを決めるのに重要なのが“収穫地”だという。奥井隆氏はこう説明する。「ワインの葡萄と一緒で、どこで採れたかが大事なのです。私どもは、いわばピンポイントで集められた昆布を扱っています」

 奥井海生堂が「最高級のだし昆布」として仕入れているのが、利尻昆布の中でも礼文島南端の香深浜(かふかはま)で採れる香深産だ。利尻や礼文などの島の周囲で採れたものは「島物(しまもの)」、稚内やオホーツクなどの北海道本島の沿岸で採れたものは「地方(じがた)」と呼ばれており、一般的に品質が高いのは「島物」の方とされる。利尻島や礼文島は火山により造られたため、金属質に富んだ土壌が精の強い昆布をつくりだすという話もある。

 さらに「島物」の中でも、礼文島の香深浜で採れる昆布は別格という。「地形や海流、日の当たり具合など、さまざまな環境で昆布の出来方が違ってきます」

奥井隆氏。株式会社奥井海生堂の4代目主人、代表取締役社長。1948年生まれ。立教大学経済学部卒業後、奥井海生堂に入社。1995年より現職。NPO法人日本料理アカデミー会員、社団法人日本昆布協会会員、敦賀商工会議所副会頭。著書に『昆布と日本人』(日経プレミアシリーズ)がある (画像提供:奥井海生堂)
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1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


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