中国での報道の自由の抑圧については前回の当コラムでも取り上げた。外国メディアへの中国当局の嫌がらせが主題だった。嫌がらせというよりも正面からの報道活動妨害と言えよう。

 今回はそれに関連して、中国での外国書籍への検閲について報告したい。本の出版でも同様に政府や党による抑圧が普通に行われている状態なのである。

 外国で出た本が中国語に翻訳され、中国人読者向けに出版される場合、中国当局がその内容を検閲することはすでに広く知られている。

 その際、どこまで、なにを削除してしまうのかという基準が公表されることはまずない。すべては秘密のベールに包まれている。

 だが出版の自由が当局によって大幅に抑圧されている事実は疑問の余地がない。ではその抑圧が具体的にどのように実行されるのか。出版社や著者だけでなく、読者にも、他の読書ファンにとっても重大な関心のあるテーマである。

検閲を受け入れず出版を拒否

 米国人の著書で、中国での検閲にからんで広く知られたのはヒラリー・クリントン氏の自伝『リビング・ヒストリー』だった。2003年に米国で出版されたこの本は日本でも『リビング・ヒストリー ヒラリー・ロダム・クリントン自伝』(早川書房)というタイトルで日本語版が刊行された。中国の出版社も関心を示し、中国語版が出される計画が進んでいた。

 ところがその過程で、同書のなかの中国政府に対する批判的な記述が大幅に削除される見通しが確実となった。その結果、クリントン氏は中国での自書の出版自体を拒んでしまった。中国当局の言論統制への明確な抗議の姿勢だった。

 米国の連邦準備制度理事会(FRB)の議長だったアラン・グリーンスパン氏が2007年に出した『波乱の時代』(日本語版タイトルも同じ)と題する本も同様の運命をたどった。

 中国語版が出ることとなったのだが、原本の内容があまりに多く削除されることが著者に伝えられ、グリーンスパン氏自身が中国での出版を拒んだのだった。