ニッケイ新聞 2013年10月26日

国内業界で5万人余解雇

 中国やインドからの安価な衣料品の輸入増加に伴って国内業界で失業者が増えていることへの反発で、繊維業界関連の団体や組合員が23日、繊維産業の国際見本市「ゴーテックスショー」会場のアニェンビー展示場前でデモを行った。24日付エスタード紙が報じた。

 ここ数年、人民元の安値誘導、圧倒的な人件費の安さを武器にした中国製などの低価格商品が出回っている。その中でこの見本市は中国系の商業団体がスポンサーとなって開催された。

 見本市側は、開催目的を「中伯の繊維業界関係者の交流を強化するため」としているが、実際に中国の業界関係者が掲げたスローガンは「大手小売業者の輸入への道筋を」だった。

 このスローガンからさらに中国製品に席巻されるのではという脅威を感じた国内業者は、“けしかけられた”として抗議を展開した。当地では知名度が低いチャイナ・ドレスではなく、皆が“東洋”の代表だと思っている“ゲイシャ”の格好で抗議行動するなど、奇妙な様相をみせている。

 事実、IBGE(地理統計院)によれば繊維、衣料業界は年頭から10月までに5万5000人も解雇している。ブラジル繊維調製協会のアギナルド・ジニス会長は、「業界では既に競争力の問題ではなくなっている」と明かし、「フェアではない輸入を撲滅するだけでなく、ブラジルは業界の競争力を高める必要がある」との見方を示した。

 衣料業界の組合のロナルド・マシジャ代表も、「10年以内に保護政策が取られなければ、業界は消滅する。輸入業者以外はどの企業も潰れてしまう」と警告している。

 ただし、このように業界関係者が危機感を示す中、ジーンズだけは例外のようだ。

 23日放送グローボTV「ボンジーア・ブラジル」によれば、他の衣料品の生産ロットは2008年から12年で4%しか増えていないが、ジーンズの国内生産本数は27%増を記録した。また、今年の衣料業界全体の成長見込みは0.8%にとどまっている一方、ジーンズ業界では13.5%の伸びが見込まれている。

 この差の理由は、原材料の違いにあるようだ。ジーンズは綿でできており、伯国は綿の生産量では世界の5位以内に入る。一方で、中国製品はアジア諸国では生産コストが安い合成繊維を使用している。

 ベーシックな形のジーンズの売上げも好調だが、小売店側は洗い加工、色、モデルなどバリエーションに富んだジーンズを求めている。

 中国から入るのは、だいたいベーシックな形のジーンズだという。中国製品よりもより早く流行を取り入れた商品を生産できるため、国内の業者は中国との競争には「勝利している」という感触を得ているようだ。

★注:伯国=ブラジル

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