9月上旬、五輪招致の成功で盛り上がる日本を尻目に、中国はしたたかに戦略的パートナーシップの布石を打っていた。
中国中央テレビ(CCTV)では、中央アジアを歴訪中の習近平国家主席が、訪問先の空港で民族衣装姿の美女から花束贈呈を受けるシーンが映し出された。カザフスタンのリンゴ農園を訪問する姿も大々的に伝えられた。おそらく近い将来、中国が同国で資源開発を行うのと引き換えに、中央アジアからの果物が中国にドッと入ってくるのだろう。
そんな中国の中央アジア外交は、筆者の生活にも影響を及ぼした。
筆者は上海の大学院に在籍し、研究活動を行っているが、9月から学内の宿舎に戻ろうとしたら、部屋にあぶれてしまったのである。宿舎管理室は「部屋はもうない。カザフスタン人とモンゴル人でいっぱいだ」とけんもほろろな態度だった。
カザフスタンとモンゴルも中国が最近重視する外交対象国だ。それに伴い、留学生の受け入れ枠も一気に拡大させたものと思われる。
まるで「石ころぼうし」を被せられた気分
中国を訪れる留学生の増減は、中国の外交戦略をストレートに反映する。「中国が大事にする国はどこか」は、留学生の顔ぶれを見れば一目瞭然だ。
中国の大学では、もはや日本人は超マイノリティである。優遇もされなければ冷遇もされないが、ドラえもんの“ひみつ道具”で言うなら、まさに「石ころぼうし」を被せられたような状態だと言える(石ころぼうしを被れば「路傍の石」のように誰にも見向きもされなくなる。孤独になりたいときに使う道具)。
一方、最近はアフリカ人の国費留学生の多さが目につく。アフリカ人「学生」は20代の若者であるとは限らない。近く、筆者の友人がアフリカから中国に研修に訪れるが、中国は毎年、アフリカ全土から350人に上る官僚を研修に招待しているという。
中国での滞在期間は3週間から2カ月。往復の航空運賃、宿泊費に加え、1日80元(約1280円、1元=約16円)の生活費まで、すべて中国側が負担する。研修プログラムは中国語や中国の文化に始まり、工業からIT、環境を含む産業や経済、政治などまでバラエティに富む。中国にとって“よき理解者”を増やすには、こうする方法が手っ取り早い。