あなたは実際に商品を開発する立場だろうか、それとも商品を販売する立場、あるいは単に消費者だろうか。
そのいずれの立場であっても私たちは様々な商品に囲まれて暮らしている。消費者であっても、日々生活するうえで、安全性や価格の面で、その商品の成り立ちを知ることが必要な時代になった。
本シリーズの第1回から第3回まで「マネジメントマーケティング」という社会全体を見通す視点から解説してきたが、これからは身近に接している商品に焦点を当てる。
新商品開発における市場対応の重要性
(1)市場対応
もし、新商品の開発を依頼されたら、どこから手をつけるだろうか。
従来多くの商品開発で、欧米諸国等を廻って日本に無い商品を見つけ出し、これを模倣して製造及び販売するという手法が取られていた。しかしこの戦略はもはや通用しない。加えて近隣諸国の、国を挙げての日本攻略的な経営戦略によって、日本の市場における中小企業の商品の販売は大きく制限されている。
このような状態では、日本人にしかできない技をベースとして、大企業の手の届かないニッチ的なゾーンにおける新商品を開発することこそが、中小企業の生き残る道となる。
これまでお会いした多くの中小企業の経営者からは「売れる商品はないだろうか」という質問がよく聞かれる。そこで、次のような経営理念やコンセプトについて問い直すことから、新商品の開発を行うことが重要となっている。
現在は情報過多の時代である。そこでは、情報を有効に活用し、かつ企業創立時の経営哲学をもう一度見直すことにより、これから開発すべき新商品のイメージが浮かんでくるからである。
(1)経営者の持っている哲学は何か
(2)わが社は何をもって社会貢献するのか
(3)わが社の存在理由は何か
(4)わが社はどうあるべきか
ひとつの例として、石鹸を取り上げて考えると、石鹸の売上高を上げるには、とにかくコストを下げるしかないとしていろいろの努力をしてみたが一向に効果はなく、石鹸メーカーは衰退の道をたどった。
しかし、考え方を変えて、当社の存在は石鹸に限らず「モノを清潔にするもの」というコンセプトに立って、世の中に貢献することに注目してみる。すると、清潔に関するいろいろの商品を商品開発の目的として研究することができる。
例えば、視野が広がることで、洗剤に関する様々な開発の情報が目に飛び込んできて、今までにない新商品の開発につながる。
また、サービスでの新商品開発の例では、民営化されたJRもそうである。国鉄時代には「座席を売っていた」が、JRになって「旅を提供する」というコンセプトが生まれた。このためJRでは国鉄時代にないいろいろな商品やサービスが生まれることになった。