6月29日の内外金融市場では、様々なリスク要因が材料視されて、株安・円高・債券高が急進行した。ニューヨークダウ工業株30種平均の終値は9870.30ドル(前日比▲268.22ドル)。ユーロ/円は一時107.30円まで円高ユーロ安が進行。ドル/円は一時88円台前半になった。また、米10年債利回りが3%割れ、日本の10年債利回りが1.1%割れになるなど、日米の長期金利はまとまった幅で低下した(6月30日作成「『03年8月中旬以来の低水準』を考える」参照)。

 この日材料になったリスク要因をおおまかに2つに整理すると、(1)米国と中国の景気について一層強く意識されるようになってきた下振れリスク、(2)ユーロ圏の信用不安問題(特に金融機関の資金繰り問題)ということになる。

 (1)のうち中国については、米民間調査機関コンファレンスボードが中国の4月分の景気先行指数を、計算ミスを理由に前月比+0.3%へと大幅下方修正したことが、大型IPO(新規公開株)による需給悪化懸念から軟調に推移していた中国株の下落幅が拡大する一因になったという。6月29日の上海総合株価指数は2500を割り込み、約1年2カ月ぶりの安値になった。

 また、(1)のうち米国の景気については、コンファレンスボードから発表された米6月の消費者信頼感指数(1985年=100)が52.9となり、前月改定値から9.8ポイントの急低下となったことが株安・債券高の材料になった。現況、期待別の内訳を見ると、現況が25.5(前月比▲4.3ポイント)で、期待が71.2(同▲13.4ポイント)。消費者の今後6カ月についての期待感が大きく損なわれたことが分かる。雇用情勢の改善がこのところ足踏み状態になっていることに加え、メキシコ湾岸の州では原油流出事故の長期化がマインド悪化要因になったという。もっとも、今回の消費者信頼感指数の大幅低下には、それまで3カ月連続で上昇していた反動という側面もある。週次で発表されている消費マインド指数であるABC指数は、6月27日までの週に▲41(前週比+2ポイント)となっており、年初に記録した今年の最高水準に並んでいる。米国の消費マインド指数が悪化基調に転じたとまで断定するのは早計であり、6月分の指数大幅低下については、それまで数カ月の安易な楽観論の反動が出たものと認識するにとどめておきたい。

 (2)ユーロ圏の信用不安問題の関連では、7月後半に公表される見込みの欧州版ストレステストの結果についての断片的な報道が市場で材料視されているが、それよりも足元で注目度が高いのが、ユーロ圏の金融機関の資金繰り問題。これがユーロLIBORのジリ高推移につながっている。欧州中央銀行(ECB)が過去に行った1年物資金供給オペ4420億ユーロの期日が7月1日に到来するため、6月30日オファーの3カ月物オペなどで、ユーロ圏内の金融機関はつなぎの資金調達を行うことになる。1年物オペを昨年12月で打ち切ったことについてスペインの一部銀行の間では不満が強いと英経済紙フィナンシャル・タイムズが伝えたが、ECBは今のところ、1年物オペの復活ではなく、3カ月物などタームが短いオペの積極化で乗り切る構えである。ただし、オーストリア中銀ノボトニー総裁がコメントしているように、「ユーロ圏のインフレ率が低水準にあることで、市場の安定化と実体経済支援に向けた金融政策を中央銀行が行いやすい状況になっている」。必要に応じて、ECBは資金供給を積極化してくるだろう。