6月29日午後の債券市場で、米10年債利回りの3%割れや、ドル/円相場の89円割れ、株安などをきっかけに、債券が買い進まれた。同日夕刻、10年物国債利回りは1.1%を割り込んで1.095%まで低下したが、これは2003年8月15日以来の低水準。筆者が次の節目とみてきた1.1%をあっさり突破した。また、5年物国債利回りは0.345%まで低下したが、これは2003年8月13日以来の水準である。

 2003年8月13日や15日というのは、グローバルなデフレ圧力が材料視される中で、同年6月10日に債券先物が145.09円の史上最高値を記録し、翌11日に10年物国債利回りが0.430%に低下した後、長期金利が徐々に上昇していった途中段階にあたる。

 短期金利や株価、為替相場などのマーケットデータ、およびその当時に入手できた直近の主な経済指標データについて、比較表を作成してみた。

図表1: 2003年8月13日・15日当時と2010年6月29日の比較
    ~ マーケットデータおよび直近発表の主要経済指標
  03年8月13日 03年8月15日 10年6月29日
国債利回り
(出合いレンジ)
10年債:0.895~0.940%
5年債:0.320~0.350%
10年債:0.895~0.940%
5年債:0.320~0.350%
10年債:0.895~0.940%
5年債:0.320~0.350%
ユーロ円TIBOR 3カ月物:0.08917%
1年物:0.10750%
3カ月物:0.08917%
1年物:0.10750%
3カ月物:0.38385%
1年物:0.56538%
無担保コール翌日
物金利誘導水準
量的緩和局面。当座預金残高目標は27兆~30兆円程度。翌日物金利はゼロ%近い超低水準 0.1%前後
株価 日経平均:9752.75円
TOPIX:951.76
日経平均:9863.47円
TOPIX:964.78
日経平均:9570.67円
TOPIX:852.19
ドル/円相場
(東京17:00)
ドル/円:119.08円 ドル/円:118.98円 ドル/円:88.63円
CPI直近値 コア:前年同月比▲0.4%
欧米型コア:n.a.
(6月分)
コア:前年同月比▲1.2%
欧米型コア: 〃 ▲1.6%
(5月分)
鉱工業生産直近値 前月比▲1.2%
(6月分確報)
前月比▲0.1%
(5月分速報)
銀行計貸出平残直近値 前年同月比▲4.8%
(7月分)
前年同月比▲2.1%
(5月分)
米2年物・10年物国債利回り(前日) 米10年物:4.58%
米2年物:1.86%
米10年物:4.55%
米2年物:1.85%
米10年物:3.03%
米2年物:0.63%
米FFレート翌日物誘導水準 1.0% 0~0.25%

注: 図表の中にある経済指標の数値については、その当時に入手できた直近の数字を表示しており、
その後の数値改定は反映していない。

出所: 総務省、経済産業省、日銀、全銀協、日本相互証券、日経新聞資料よりみずほ証券金融市場調査部作成

 上表の数字を単純に整理すると、次のようになる。

(A)2003年8月当時と比べた場合、足元の方が債券相場への追い風が強いのは:
(1)「株価」、(2)「ドル/円相場」、(3)「米国債利回り」、(4)「米政策金利」、(5)「CPI(消費者物価指数)コア」

(B)2003年8月当時と比べた場合、足元の方が債券相場への追い風が弱いのは:
(1)「短期金利(含む日銀の政策金利水準)」、(2)「鉱工業生産」、(3)「銀行計貸出平残」