8月の初め、北海に、ドイツで3番目のオフショア(洋上)ウインドパークが完成した。商業的ウインドパークとしては初めてで(既存の2基は試験用)、リフガートウインドパークと命名されている。
ウインドパークというのは、複数の風車が立ち並ぶ大型発電施設だ。風力発電の欠点は、凪ぎのときや、風の吹かない時期に発電できなくなることだが、ドイツ北方にある北海とバルト海は、年がら年中、風が強く吹くので、その心配がない。
しかも、風は夜中も吹くから、太陽光発電と違って極めて効率が良い。北海のテストウインドパーク 「alpha ventus」では、2012年、発電効率96.5%を記録した。他のどんな再生可能エネルギーも、これほど安定した電力供給はできないそうだ。
そのため、福島第一原子力発電所の事故のあとに脱原発を決めたドイツでは、オフショアウインドパークに大いなる期待がかかった。これこそが、将来訪れるはずの原発フリーの世界で、特別明るく輝く希望の星となるはずであった。
期待を集める巨大風力発電プロジェクトの致命的欠陥
さて、今回完成したリフガートウインドパークは、30基の風車からなり、108メガワットの性能を持つ。風車の羽1枚の長さは60メートル。つまり、風車が回った軌跡の円の直径は120メートルにもなる。水面上に出ている支柱の高さは90メートルなので、水面から羽の一番てっぺんまでの距離は、約150メートルだ。
支柱は、海底を掘削して造った基礎に固定されている。基礎は長さ70メートル、深さ40メートルという巨大なものだ。設計から工費まで、合計で4億5000万ユーロ(約585億円)が投資された。この高価な30基の巨大風車が順調に稼働すれば、12万戸の家庭の電気を供給できる。まさに、希望の星にふさわしい。
ところが残念なことに、リフガートには致命的な欠陥がある。ウインドパークと陸地を結ぶケーブルの敷設が完成していないのだ。発電しても、電気はどこにも運べない。だから、発電できない。
ケーブルの完成は、早くても来年の春になるらしい。つまり、目下のところ、リフガートは何の役にも立たない発電施設である。
送電線の敷設は、ドイツの脱原発計画のネックだ。遅れているのはオフショア発電向けの海底ケーブルだけではない。地上の高圧送電線の敷設も滞っている。