世界一臭い「王様のフルーツ」、ドリアンのシーズンが到来! このドリアン抜きにアジアは語れない――と言っても過言ではない。

 「果実の王様」「悪魔の果物」「禁断の果物」と、数々の異名を誇るのも王様のフルーツならでは。原産地はマレーシア・インドネシア(ボルネオ島)で、今でも世界のフルーツ王国と言われる東南アジアにしかない希少で不思議な果物。

完熟ドリアンは、ひと味もふた味も違う

 王様らしく、姿は見えずとも風とともに漂う威風堂々としたあの強烈なにおい。「玉ねぎが腐ったような」「鼻にツン!と来る都市ガスのような」とも表現される芳香には、“王様ならではの体臭?”とたじろいで、食べず嫌いの人も多いのでは。

体中がトゲで覆われ、手袋をしないと触られない。東南アジアでは「国民食」とも言えるドリアンをたらふく食べるために一生懸命働いているというドリアンマニアは数え切れない(写真提供:筆者、以下特記がないものは同じ)

 日本人など外国人の間でも、好き嫌いが面白いほどはっきり分かれるのが、このドリアン。しかし、東南アジア以外では味わえないその独特な味わいに、やみつきになってしまう日本人も多い。

 その奥深さはまるでスルメのよう。噛めば噛むほど味わい深く、一度食べたら、止められない止まらない。やみつきになるこのおいしさは、まさに「王様」の名にふさわしい。

 そのゴツゴツ、イガイガな外見からは全く想像できないほど、中からとてもデリケートでクリーミーな果肉が顔を出す。食べてみると、高級なクリームチーズのように一瞬のうちにふわっと口の中に広がり、えも言われぬ味わいが・・・。

ドリアンの堅い殻を切ると中には淡黄色のクリームチーズのような果肉が

 無類のフルーツ好きの私も、実は食わず嫌いだった。が、ある日、ジャングルの集落で「さっき木からポッコリ落ちてきた」と、オラン・アスリ*からいただいた完熟ドリアンに出合ってから、その味に“一目ぼれ”!

* マレー半島の先住民族、Orang Asli。マレー語でOrangは「人」、 Asliは「本来の」という意味。ちなみにオランウータンは「Orangutan、森の人」という意味。

 ドリアンは当たりはずれが多く、美味なものの見分け方も難しく、王様らしい気難しい果物。本当においしいものは、街中やスーパーで売っている一般の味とは全く違う(ドリアンの選び方、食べ方などの極意は後でご紹介する)。

 とても洗練されたクリーミーな甘さに、ほどよい“香り”が漂う。私も今では「隠れドリアンファン」の一人になった(公言すると、頻繁にドリアン食べ放題ツアーに引っ張りだされてしまうので)。

 選び方や食べ方だけでなく、日本を含め海外では、まだまだ誤解や謎の多いのもこの王様のフルーツの特徴。今回は、ベールに包まれたドリアンの素顔を徹底解明する。