中国の清華大学・胡鞍鋼教授(経済学)は最近「中国共産党の集団指導体制は明らかにアメリカの大統領制より優れている」と唱えている。

 胡教授によれば、アメリカの大統領制では大統領に権限が集中しすぎるため、間違った判断に歯止めがかからない。その判断はアメリカ全国民に大きな不利益をもたらすことになる。大統領本人が被る不利益はせいぜい弾劾されるだけと言われている。

 胡教授の言いたいところは、大統領制では権限が極端に集中するからリスクが大きい、一方、中国共産党の集団指導体制では権限は「チャイナセブン」と言われる常務委員に分散されるのでリスクも分散される、そして7人の指導者の知恵はアメリカ大統領1人の知恵より優れている、ということだろう。

 アメリカで留学・研修をした経験を持つ同教授は日本にも数十回訪問したことがある。日米社会の実情と中国社会の現状をどこまで踏まえてこのような判断を下したのかは不明だが、共産党集団指導体制の方がアメリカの大統領制よりも優れていると断じるには、より客観的な考察が必要になる。

 例えば、毛沢東時代の独裁政治をきちんと総括すべきである。同教授が指摘したアメリカ大統領制の弱点は、現在のアメリカ大統領制のものというよりも、毛沢東時代の独裁政治の弊害そのものだった。否、毛沢東時代の独裁政治の弊害は、言われているよりももっと大きく深刻なものだった。毛沢東は間違った判断を下しても辞任する必要はなかった。ちなみに、アメリカ大統領の権限は議会のチェックアンドバランス機能によって制限されている。

中国人の「奴隷性」とは?

 共産党の集団指導体制は、理論的には確かに優れている面も存在する。1人の指導者ではなく、指導部のみんなが民主的に決めることで、間違った判断を避けることができる。

 ただし、集団指導体制が機能する前提として、意思決定のすべてのプロセスを透明にしなければならない。

 現在、共産党中央の意思決定プロセスは完全にブラックボックス化されている。かつて江沢民政権の時代、全人代での法案審査と人事決定についていくらかの反対票と棄権票が投じられていたが、近年、法案と人事がほとんど全会一致で採択されている。