週刊NY生活 2013年8月10日454号

 沖縄県の尖閣諸島(中国名:釣魚島)を巡り5日付のニューヨークタイムズ紙の広告欄(国際面A5)に、中国人留学生による「日本人学者の井上清教授:釣魚島は中国領」と題した意見広告が掲載された。

ニューヨークタイムズ紙に掲載された広告

 掲載者は米国に大学留学中のグアンビャオ・チェン氏で、1972年に社会活動家で京都大学名誉教授だった井上清氏(1913~2001年)が執筆した著書『「尖閣」列島-釣魚諸島の史的解明』(現代評論社)の内容を支持・引用した上で、魚釣島は中国の領土であると主張している。

 英・中国両語で記載されたニューヨークタイムズ紙半段広告では冒頭で、「父のグアンビャオ・チェンは『Best Moral Model of China』(中国で最高の人格者)と称され、中国人民政治協商会議の著名評者を13年間務めている」と自己紹介している。

 魚釣島の中国主権論のおもな根拠として、(1)日清戦争(1895年)で勝利した日本が中国から釣魚島を強制的に占領した(2)明朝時代(1368年~1644年)および清朝(1636年~1912年)の記録からも世界は中国の主権を確認していた(3)琉球王国に派遣された明朝と清朝の特使の活動を記録した当時の書物には釣魚島は琉球王国ではなく尖閣諸島に属す、とある(4)中国周辺を描いた当時の地図「Chou Hai Tu Bian」では釣魚島が中国本土と同色で示され防衛区域であることを意味する。

 13世紀から16世紀にかけて東アジア地域において活動した海賊・倭寇と関連させ、「日本の海賊であった倭寇からの海岸防衛戦略の対象地域であったこの歴史的な事実が、中国の主権が当時あったことへの決定的な証拠になる」と主張している。

 さらにチェン氏は、井上氏が主張を共有する日本人の一人、林子平氏が1785(天明5)年に江戸で刊行した日本の近隣諸国3か国(朝鮮・琉球・蝦夷)をイラスト化した地誌『三国通覧図説』で、魚釣島が中国と同色で示されていることにも言及している。

 チェン氏は結論で、「井上氏は、歴史の真実を追求する倫理観と使命感に基づいて中国の領土であることを証明している。わたしは米国民に対し釣魚島が永続的に中国の領土であることを伝えたい」としている。

 これに対し、在ニューヨーク日本国総領事館は「歴史上、国際法上において尖閣諸島が日本固有の領土であり、これまでの日本政府の基本的立場に変わりはない」と回答した。

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