8月6日に行われた海上自衛隊護衛艦「いずも」の進水式の模様が、CNNやBBCをはじめとする米英メディアや中国中央電視台国際放送CCTVでも報道され、アメリカ海軍や軍事関係者の間では“ちょっとした”話題を呼んでいる。

 また、予想通り、中国は過剰反応を示し(あるいは言いがかりをつけ)、人民網英語版や環球時報英語版をはじめとする英文中国メディアは批判的に報じている。

「ヘリコプター空母」のように見える駆逐艦

 一般の米英メディアや海上自衛隊艦艇にそれほど詳しくない米軍関係者たちにとって、何と言っても奇異に受け取られている点は、防衛省が「いずも」をDDH、すなわち「ヘリコプター駆逐艦」に類別していることである。

 軍艦は便宜上それぞれ型式を類別して個々の艦艇ごとに識別番号(ペナントナンバー)が付与されることになっている。「いずも」の型式類別はDDHでありペナントナンバーは183であるから、DDH-183といえば「いずも」と特定できるわけである。

 現在のところ水上艦艇の型式類別には厳密な国際的定義が確立しているわけではない。そのため、運用国の国防当局が割り振った型式類別がその軍艦の公式類別となる(水上艦艇と違い、潜水艦の型式類別はかなり明確に決まっている)。だからといって、航空機を運用できない軍艦を航空母艦に類別することは常識的にもできないし、そのようなおかしな類別をしても何のメリットもない。

 ところが、「いずも」型護衛艦(「いずも」「いずも」の姉妹艦で建造予定の「24DDH」)、それに「ひゅうが」型護衛艦(「ひゅうが」「いせ」)の場合、世界中の海軍関係者がその艦影図とおおまかな概要を見れば例外なくなんらかの「航空母艦」と見なす艦形であるにもかかわらず、日本国防当局は「駆逐艦」と称しているため、海軍関係者たちや米英メディアが不思議がっているのである。

全通飛行甲板は航空母艦最大の特徴(写真:米海軍)

 上述したように、軍艦の型式類別は運用国が決定するわけであるから、日本国防当局が「ひゅうが」「いせ」「いずも」そして「24DDH」をヘリコプター駆逐艦(DDH)と類別した以上、いくら国際常識的類別ではヘリコプター空母(CVH)や軽空母(CVL)あるいは対潜空母(CVS)であってもそれらの公式類別は航空母艦ではなく駆逐艦なのである。

 ただし、全通飛行甲板と格納デッキを有した、全長248メートルで満載排水量2万7000トンという超巨大な駆逐艦は世界中に存在しないため、これらの“ヘリコプター駆逐艦”が国際社会ではヘリコプター空母と呼ばれてしまっても致し方ないことである。

イギリス海軍軽空母アーク・ロイヤル(手前)、アメリカ海軍空母J.F.ケネディ(中央)、アメリカ海軍強襲揚陸艦グアム、いずれも全通飛行甲板と格納デッキを持つ(写真:米海軍)
アメリカ海軍空母ニミッツ(左)とアメリカ海軍強襲揚陸艦エセックス。強襲揚陸艦には揚陸艇等格納用のウェルデッキが設置されている。(写真:米海軍)