筆者の手元に、中国人民大学出版社から刊行された『政治学原理』という大学院の教科書がある。中国人民大学・北京大学・清華大学・復旦大学など中国の名門大学の教授らが編纂したもので、現在、中国では多くの学生がこれを教材として使っている。
中身は「政治学の研究法」から始まって「国家と政府」「価値と文化」「政府と国民の関係」・・・などと編集されている。目を引いたのは、第7章の「軍事力」だ。中国の政治において「軍事力」とはどのように定義されているのだろうか。
ページをめくってみると、そこには「軍事力」の意味から始まり、その起源や発展の過程、特徴、さらには国家政治における位置づけ、主要先進国における軍事力の現状、国際政治の中における役割など、その解釈がこと細かに書かれている。
全体的には、武力の行使を積極的に支持している印象を受ける。確かに中国の歴史は戦闘の歴史そのものであり、近代史においては民族自決のための手段でもあった。
中国国歌が抗日映画の主題歌であったように、彼らの宿敵は“日本”である。国歌中に出てくる「敵の砲火をついて進め!」の「敵」は日本を示しているとも言われている。
毛沢東語録にも「政権は銃口から生まれる」「戦争は政治の継続」という表現が登場する。中国にとって政権と武力は切っても切れないものであることが分かる。
国家には「十分に強大な軍事力」が必要
この教材には「現代社会における軍事力」が現実的な視点で解説されている。例えば、次のような記述がある。
「一般的に、軍事力の基本機能は政権の統一を守り、侵略を防ぎ、国家主権と領土、社会秩序を守るものとされている」
「様々な国家がみな異なる制度において組織機関を建設し、軍事力を制御し管理する。武装体制は各国の政治体制における重要な組成部分となる」
「現代国家はいずれもみな、文官のみに頼って守ることはできない」「なぜならこれら統治の合法性は、内部あるいは外部の政治勢力の威嚇を受ける可能性があるからだ」