誰の目にも中国経済の減速が明らかになった。中国政府は7%を上回る成長を続けていると言っているが、それを信じる人はいないだろう。

 シャドーバンクの破綻による7月危機が取りざたされたが、どうやらそれは乗り切ったようだ。しかし、いずれにしろ、中国はこれまでのような高度成長を続けることはない。2013年度の後半は実質ゼロ成長になるとの予測も出ている。

 経済成長率の鈍化は中国の社会にどんな影響を与えるのであろうか。経済減速が引き金になって共産党政権が崩壊するとの予測がまことしやかに囁かれているが、その通りになるとは限らない。広い視野を持って冷静に判断すべきだろう。

 本稿では、デモにより短期間に2度も政権が転覆したエジプトとの比較から、中国の今後について考えてみたい。

ツイッターで一丸となったエジプトの若者

 エジプトではモルシ政権が倒れて大混乱に陥っている。独裁を続けていたムバラク政権が崩壊した後に、モルシ政権は民主的な選挙によって選出された。それがあっけなく崩壊してしまった。

 ムバラク政権崩壊の原因にツイッターがある。若者を中心にツイッターで情報が瞬時に拡散し、それが大規模デモを誘発したとされる。

 当時、中国でも同様の現象が起きるのではと期待されたものだが、中国で反政府デモが起きることはなかった。もちろん、共産党政権も崩壊していない。

 その原因として「中国当局がネット情報を管理したから」などと言われているが、ネット情報の管理は難しい。情報管理に成功したために大規模デモが起きなかったわけではないと思う。真の原因はネット管理のあり方ではなく、エジプトと中国の若者が置かれた状況の違いにあると考える。