マット安川 参院選直前だった今回、ゲストに慶應義塾大学教授・憲法学者の小林節さんをお迎えして、各政党の解説や外交問題、憲法問題など、幅広くお話を伺いました。
明治憲法回帰? 自民党改憲主流派の憲法観は危険である
憲法学者、慶應義塾大学教授、弁護士。日本海新聞・大阪日日新聞客員論説委員。近著『「憲法」改正と改悪』など著書多数。(撮影:前田せいめい、以下同)
小林 憲法は国民の幸福を追求するための基本法ではないかと言う方がいます。大きな目標としてはその通りです。
そもそも成文憲法というものは、アメリカの独立戦争から生まれました。主権者たる国民が幸福に暮らすために国家があり、その国家には管理人としての政治家以下公務員が必要で、権力を握る彼らは国民の幸福追求を支援しなければならない。
その際、権力は間違っても濫用されてはいけないのですが、歴史を振り返ればそれが必然であるかのように濫用されてきました。そこで国民が権力を管理するためにあるのが憲法というものです。
つまり憲法の大目標は国民の幸福追求ですが、ひとつの側面として権力者の暴走を防ぐ機能を持つということだと思います。
私が気がかりなのは、自民党内では明治憲法に戻ろうとしている人たちが改憲論議の主流派だということです。
僕らにとっての憲法というものは主権者である国民大衆が権力者を管理するものなんですが、彼らにしてみれば権力者が自分で国の理想や歴史を書くのが憲法で、全国民はそれを支えなさいという感覚なんですよね。
本当にそんなふうに思い込んでいるとしたら、恐ろしいことだと思います。
変えなければいけないのは前文と9条のみ。「3大原理」は堅持
私が思うに現憲法で改正すべきは前文と9条です。
9条について言えば、われわれは独立主権国家として自衛権を持っている、だから侵略されたら自衛戦争をしますよ、そのための自衛軍も持ちますよ、ただし歴史の体験に反省して、間違っても侵略者と呼ばれるようなことはしません、ということを書く。
海外派兵に関しては、多数決で決めるのではなく、国連決議と国会の事前承認を条件とすると。本当に緊急性のあるところはこれだけだと思います。