この原稿が掲載される日の朝、今年の米中戦略経済対話(S&ED)はすべての日程を終え、締めくくりの共同最終声明発表が行われている頃だろう。ワシントンで7月10日、11日の両日、米中双方から合計30省庁ものトップが参加して開催された米中閣僚級年次協議は今年で早5回目となる。
本来なら会議終了後にこの原稿を書きたいところだが、それでは締め切りに間に合わない。しかも来週はワシントン出張が入っており、米国の最新情報についてはその時に書くつもりだ。されば、いつもの通り、限られた情報に基づき、今回のS&EDの意義について筆者の独断と偏見をご披露しよう。(文中敬称略)
S&ED日程から見える実態
米国務省によれば今年のS&EDの米中双方の共同代表は、米側がジョン・ケリー国務長官とジェイコブ・ルー財務長官、中国側が杨洁篪国務委員と汪洋副首相であり、全員S&EDは初参加だ。
国務省関係の具体的会合日程は次の通りだが、同時並行的に財務省で行われる経済関係会合も似たようなものだろう。
7月10日(場所はすべて国務省)
0900 全体開幕セッション(4人の共同代表が参加)
1015 気候変動セッション(4人の共同代表)
1130 エネルギー安全保障セッション(4人の共同代表)
1245 安全保障トラック少人数ワーキングランチ(ケリー長官と楊国務委員)
1415 安全保障トラック少人数セッション(ケリー長官と楊国務委員)
1800 全体写真撮影(4人の共同代表)
1830 全体夕食会(4人の共同代表)
7月11日
0830 米中企業CEOとのラウンドテーブル会合(4人の共同代表、ただし、国務省からはバーンズ副長官が出席、場所は財務省)
1015 安全保障トラック全体会合(バーンズ副長官と楊国務委員、場所は国務省)
1130 エコ・パートナーシップ関連行事(同上)
1215 安全保障トラック少人数ワーキングランチ(同上)
1345 安全保障トラック少人数セッション(同上)
1730 米中最終声明発表(4人の共同代表、場所は財務省)
1810 米側共同代表による記者会見(米側共同代表、場所は財務省)
以上長々と日程を書き出したのにはわけがある。読者の皆さんにこの種の会議が実際にどのように動いていくかを理解していただきたいからだ。「2日間も長時間会合ができるのだから、米中関係緊密化は予想以上に進んでいる」と思われるだろうが、おっとどっこい、そう簡単なものではない。
ほとんどは原稿の読み上げ
例えば気候変動関係は初日の10時15分から75分間。長いようだが逐語通訳を入れれば、片道では全体の4分の1の20分にも満たない。代表は双方とも2人だから、1人当たりは10分。しかも、気候変動については別途事前に専門家会合が開かれ、双方の発言は整理されているのだろう。
閣僚レベルで丁々発止の激論を交わす時間はまずない。少なくとも中国側は個々の発言について詳細な原稿を作成しているはずだし、米側も恐らく同様だ。この点は気候変動の次に議論されるエネルギー安全保障に関する議論でも変わらない。時間は同じく1時間15分しかないのだから、仕方ないだろう。