安倍晋三首相が6月5日、「成長戦略」を発表したが、その具体的内容は、発送電分離や再生可能エネルギー開発、大衆薬のインターネット販売の解禁、都心の容積率緩和など、これまでに出た細かい話ばかり。論議を呼んだ金融政策に比べると、大胆でも「異次元」でもない。日経平均株価は、この発表を受けて500円以上も値下がりした。

株安・円高をもたらした「本丸」の成長戦略

 安倍政権の滑り出しは快調だった。2012年11月、野田佳彦首相(当時)が解散を決めたあと、安倍総裁は「日銀が輪転機をぐるぐる回してお札をすれば景気はよくなる」と宣言し、「インフレ目標でデフレを脱却する」と宣言した。

 2013年1月22日には政府と日銀の共同声明で「2%のインフレ目標」を明記し、ちょうど任期を迎えていた日銀の白川方明総裁の代わりに「2年で2%のインフレは実現できる」という黒田東彦氏を総裁に任命した。

 しかし「第1の矢」である金融政策は、最初の頃こそ勇ましかったが、日銀が国債を大量に買い占めて民間の機関投資家を国債市場から追い出したため、かえって長期金利は上がり、金融引き締めになってしまった。

 「第2の矢」と称する財政政策は単なるバラマキで、誰も効果を期待していない。そして出てきた「アベノミクスの本丸」と首相が自認する「第3の矢」がこれでは、市場が失望するのも当然だ。

 それでも「2007年には1万8000円台をつけたので、まだ調整局面だ」という声があるが、ドル高のおかげで、日経平均の5月の最高値は約150ドルと、ドル建てで見ると2007年の最高値とほぼ同じだ。日本の株式市場の6割は外国人投資家なので、彼らの目から見ると、日本株のピークはもう終わったのだろう。