ドイツニュースダイジェスト 15 Marz 2013 Nr.950
「連邦制」という言葉から、まず何を思い浮かべるだろうか?
米国のテレビドラマで、事件現場に現れた地方警察とFBIが管轄について言い争うシーンを思い出される方も多いかもしれない。米国では、銃の所持が合法化されている州とそうでない州があるということを聞いたこともあるだろう。ドイツも連邦制を採用しているが、この国の連邦制にはどんな特徴があるのだろうか?
連邦制とは?
州名と州都、いくつ言えますか?拡大画像表示
連邦制とは、2つ以上の州が1つの主権の下に集まり、形成される国家のことである。中央政府と州政府の権限が明確に分けられ、国民国家を形成している。
地方政府の権限が中央政府から委任された事項に限られる単一国家に対し、連邦制では、国家を構成する州の主権が尊重され、共通の利害に関わる外交政策などを中央政府が担当する。
ドイツの連邦制は、米国のそれに比べると連邦と州の間の連携が強く、穏やかな連邦制と言えるだろう。
州ごとの違い
実際にドイツに住んでみると、その違いが見えてくる。例えば、州ごとに設定されている祝日が異なるため、祝日だと思って隣の州の友達の家に遊びに行ってみたら、そこでは祝日ではなかったということもあり得る(ただし、州の祝日に会社は休みでないことも)。
これは、ドイツの政治において、文化政策は各州の権限に属するとされているためだ。
連邦の権限・州の権限
具体的にどのような権限が、連邦と州に与えられているのだろうか。連邦と州にはそれぞれ、立法、行政、司法の権限が与えられている。連邦共和国基本法では、連邦に付与されている以外の立法権を州に与える一方で、州法に対する連邦法の優位性を規定している。
連邦の有する立法権は、外交、防衛、通貨、関税、航空、郵便・電気電信、警察に関する連邦と州の協力などがある。また、連邦全域にわたり同等な生活水準を確立するために、経済法、労働法、社会法、交通法、民法、刑法なども連邦の管轄となっている。連邦内全体の経済的均衡の観点から、財政法も連邦の管轄である。
一方、州の立法権としては、教育制度、文化政策、地方自治制度、警察制度などがある。
州の立法権は非常に限定されているが、連邦が立法を行わない一部の領域では、州が立法することも可能である。立法の分野における連邦と州のパワーバランスは、連邦の方に傾いているのに対し、行政の分野においては、逆に州の方に重点を置いた権力配分になっている。
連邦制のメリット&デメリット
連邦制のメリットは、行政区分が小さいために、小回りの利く政治を実施できることだろう。一方のデメリットとしては、州間の格差が発生することが挙げられる。
実際に現在、経済的に豊かな州が貧しい州の財政を支える「州間財政調整制度」が問題になっている。豊かな州であるバイエルン州とヘッセン州はこの制度が違憲であるとして、先月、連邦憲法裁判所に提訴することを決定した。
また、教育の格差についても問題視されている。ドイツのギムナジウム(日本の小学5年生から大学1年生の学年に相当)の生徒は、卒業試験として大学入学資格取得試験アビトゥア(Abitur)=下記に関連コラム=を受験するが、全国統一試験であるにもかかわらず州間で難易度が異なり、一般に南部で難しいとされている。
一生を左右し得るテストの判定基準が全国で統一されていないというのでは、生徒たちはたまらない。そのため、2017年よりドイツ語、フランス語、英語、数学において、全国統一基準が採用されることになった。
今回はドイツの連邦制について触れてみた。日本在住の方や、ドイツで暮らし始めたばかりの方には、いまいちピンとこなかったかもしれないが、各州がそれぞれ個性を持って発展していることがドイツの魅力の1つならば、その千差万別な地方の魅力の源にあるのが連邦制とも考えられるだろう。