先週、「『ドイツを見習え』とばかり言っていると、日本国は大変重篤な事態に陥ってしまうのではないか」というような問題提起をしたら、「原発容認派の人が書いた記事、日本エネルギー会議、納得」などという皮肉を、ツイッターで書いた人がいた。問題の在り処が見えない人のようだ。
原発については情緒的だけでない議論が必要
日本エネルギー会議というのは、本郷安史氏が中心となって運営しているフォーラムで、信頼に値する情報を発信し、現実的で地に足の着いた世論を喚起するということを目的に、2012年2月に立ち上げられた。ひょんなことから私も発起人の一人だ。
福島の原発事故が招来した広域災害、そして、それに続いて漏れ出したさまざまな情報は、私たち国民に、原発と、その関係者への強い不信の念を植え付けた。その結果、反原発運動はあっという間に情緒的なものとなり、放射線の不安ばかりが煽られることとなった。
そして、本来ならエネルギー問題を考えるうえで不可欠な、安定供給、安全保障、あるいは国力の維持・発展といった視点は、それを口にするだけで弾劾されるような状況が出来上がってしまっている。問題提起さえできないという状況は、絶対におかしい。
そこで、まずは、いろいろな信頼するに足る情報を集め、偏見や思い込みを捨て、皆で考えようじゃないかというのが、日本エネルギー会議の趣旨だ。
趣旨書によれば、「国内外の英知を結集して、エネルギーに関して“今おきていること” や“明日に向けて考えるべきこと”を客観的かつタイムリーに紹介し、我が国のみにとどまらず世界の国々に貢献できるエネルギー政策を実現するため活動」ということになる。
日本の科学技術は、日本の発展のためだけでなく、世界に貢献するように使っていきましょうというのは、志が高くて、私は好きだ。
ここでの第一の目的は、「創造的な議論」で、一流の学者、見識者が賛同し、名を連ねている。よく登場するメンバーの中には、原子力の研究者もいれば、再生エネルギーの研究者もいる。唯一の共通点をあえて言うなら、皆が真に日本のことを考えているということだろう。そして一生懸命に、よかれと思うことを、信念を持って述べている。
代表を務める日本工学会会長、前芝浦工業大学学長の柘植綾夫氏は、「オープンに語り合い(略)、それを基に、政策決定に関わる公的立場への提言や情報発信を行うとともに、日本の次代を担う若者達とも積極的に交流を深めていきたい」と言う。
私はエネルギー問題に関しては素人なので、ここにいるのは大いに場違いな感じはあるが、それを言うなら、同じ発起人のアルピニストの野口健氏も門外漢だし、これを立ち上げた本郷氏自身も、別にエネルギーの専門家ではない。皆、自分のできる範囲で尽力したいと思っているにすぎない。