「従業員の大量整理」「製造ラインを売却」・・・。薄型テレビの代表格、液晶パネルを巡る報道は、昨年来ずっと暗いトーンばかりだ。足元、シャープの経営危機が表面化したほか、パナソニックも四苦八苦。他の日系メーカーにしても液晶パネルに関する明るい話題は皆無といったところではないだろうか。
ニッポンの液晶は死んだのか。フロントランナーたちに関しては否定できない。だが、海外に目を向けると、いまだに液晶パネルは新規の投資を呼び込む分野。また関連したビジネスでは日本勢が圧倒的シェアを誇っているのだ。
主要なメディアがあまり取り上げることのないビジネスについて、2回に渡って触れてみる。
パネルメーカーは惨憺たる状況だが・・・
本題に入る前に、液晶パネルの代名詞だったシャープの惨状を見てみよう。
同社は先に、約1400名の本社社員を700名程度に削減することを明らかにしたほか、海外のテレビ工場売却に向けて、様々なメーカーと交渉を展開している。また、「液晶のシャープ」のブランディングを確立した三重県の亀山工場、いわゆる“亀山モデル”にしても、稼働率が下がるなど惨憺たる状況にある。
同工場はかつて同社のシンボルだったわけだが、シャープ本社の土地・建物とともに、取引銀行が追加融資の条件として抵当権を設定するなど、巨大製造業としてはかなり際どい状況にあるのはご存じの通り。
同社独自の省電力・中小型液晶「IGZO」が米アップル、韓国サムスン電子向けに提供されることで、「なんとか首の皮一枚で持ち堪えている状態」(国内系運用会社アナリスト)と言える。
シャープほどではないにせよ、パナソニックも同じく苦境にある。各種報道によれば、同社は国内の液晶パネル製造を徐々に縮小させ、外部からの調達を増やす方向にある。
また、産業革新機構が中心となり、ソニー、東芝、日立製作所の各ディスプレイ部門を統合したジャパンディスプレイにしても「iPhone5の販売不調で、思ったほどの成果が出ていない」(同)との声が聞かれる。