今週は連休中だというのになぜか異常に忙しかった。まず、4月29日夜から5月1日夕刻までは、韓国有力シンクタンクの年次総会に招かれてソウルに出張していた。韓米日中欧などの外交安全保障専門家約120人を集めた2日半の盛大なイベントだった。

 米国の「アジア村」関係者だけでも、「綺麗どころ」を含め、20~30人はいただろうか。米国内ならいざ知らず、北東アジアではちょっと珍しい。日本はもちろん、今の中国にも、これだけの数の面々を自国に呼べるシンクタンクはないだろう。文字通り、脱帽である。

 続いて、5月2日午後は参議院予算委員会公聴会に公述人として招かれた。公聴会が開かれるということは、予算案の採決スケジュールが決まった証拠。役人を辞めて今年で9年になるが、まさかこの公聴会に呼ばれるとは思わなかった。光栄の至りである。

 公聴会での3時間の議論が終わったら、さすがにドッと疲れが出た。さて一休みしようと思ったところで、本稿の締め切りが木曜日であることを思い出した。熟慮の結果、今回はソウルと東京で中国がどのように議論されたかをご紹介したい。(文中敬称略)

緊張感が感じられないソウル

 まずはソウルの話から。29日朝はちょっと雨が降ったらしいが、筆者が金浦空港に到着した頃にはきれいに晴れて、遠くの山々がはっきりと見えた。幸い、ここにはPM2.5などの大気汚染はなさそうだ。かくも清清しい春のソウルを見るのは久しぶりだった。

 会議の主要議題の1つは当然「北朝鮮」。到着前はミサイル発射などで韓国全体が警戒態勢にあるのかと思ったが、予想に反し、ソウルの一般国民に緊張感は全く感じられなかった。来るたびに感じることだが、朝鮮半島では「冷戦」が長すぎたのかもしれない。

 今週日本の要人は皇族から、総理大臣、さらには大企業幹部に至るまで「外遊」のラッシュだが、ここソウルは一種の「エアーポケット」だった。普通なら日本の要人・観光客でごった返すらしいが、今年は韓流ファン日本女性の訪韓が激減していると聞いた。

 この話は空港で乗ったタクシーの運ちゃんが教えてくれた。彼は日本語と英語ができる。この韓国人運転手は、4月30日に米韓共同演習が終わるが、その後が最も危ないという。彼は在韓米軍の運転手だったそうだが、5月2日現在、いまだミサイル発射はない。

四面楚歌でもめげない中国

 会議では日本の閣僚による靖国参拝や安倍晋三首相の政治姿勢も話題になった。特に、中国と韓国からの一部の参加者は、歴史と全く関係のない文脈でも「日本の歴史問題」を持ち出していた。こうした中韓の「宣伝競争」は執拗であり、正直辟易した。

 一方、日本の歴史問題が「表の主役」だとすれば、「影の主役」はやはり中国だった。特に、最近増大する中国の自己主張と誤算に基づく摩擦・衝突発生の可能性は、会議場の内外で、多くの(中国人以外の)参加者が内々懸念しているのだと強く感じた。