米国統合参謀本部議長デンプシー陸軍大将がNHKのインタビューで、訪日直前に訪中した際に中国側が「尖閣諸島は中国にとり核心的利益である」と繰り返して述べたと語った。

 それに関連したマスコミの質問に対して、4月26日、中国外交部の副報道官は「尖閣諸島は中国の領土的主権に関わる問題で核心的利益である」と公開の場で明言した。

 ただし、中国外交部が公にした副報道官の記者会見録では「核心的利益」の部分が消えて「領土的主権に関わる」とだけ表現されている。したがって、中国共産党によって尖閣諸島が100%「核心的利益」と定義されたわけではなく、「核心的利益」に限りなく近づいていると認識すべきであろう。

米国国防情報局長官の議会証言

 この中国共産党政府が用いる「核心的利益」に関しては、4月18日のアメリカ連邦議会上院軍事委員会でのアメリカ国防情報局長官フリン陸軍中将による、アメリカに対する軍事的脅威に関する報告の中での中国に関する報告でも、その冒頭で取り上げられた。

 フリン長官の中国に関する報告は、「中国人民解放軍は、中国にとっての『核心的利益』を防衛するために必要な能力を持った近代的軍事力建設に邁進している」という分析で始まった。そして、「核心的利益とは領土的主権の確保、中国の政体の維持、それに経済的社会的発展の持続」を意味しており、「領土的主権の確保とは、台湾ならびに他の中国周辺での領土・領海に関する中国への異議申し立てを排除する」ことであると説明している。

 さらに、中国にとり最大の「核心的利益」は台湾の分離独立を阻止することであり、中国人民解放軍による組織再編、武器開発、作戦計画それに訓練を推し進めている最大の要因は台湾との衝突の際に予想される米国の介入に備えるためである、とフリン中将は台湾の軍事的支柱となっている極東アメリカ軍こそが中国最大の核心的利益にとっての障害物であると中国が見なしていることを強調した。

 そして、台湾ならびに台湾支援のための米軍を牽制するために、各種短距離弾道ミサイル(非核弾頭搭載)をすでに1200基以上も揃えているだけでなく、それよりも数量は限られているが多数の中距離弾道ミサイル(非核弾頭搭載)も台湾威嚇のために準備しており、台湾支援のために接近するアメリカ軍艦を威嚇するためにDF-21D対艦弾道ミサイルを投入している、と中国弾道ミサイルの充実に注意を促している。

 また、かつては中国領空での迎撃任務のために整備されていた空軍力も、いまや近接海域(すなわち台湾上空をも含んだ東シナ海・南シナ海)での攻撃任務や早期警戒・偵察任務に対処するよう構築されている、と人民解放軍の空軍力の変質も指摘している。