先月、米ヤフーは、17歳の英少年が最高経営責任者(CEO)を務めるサムリー(Summly)という会社を買収すると発表したが、米ニューヨーク・タイムズによると、同社がこうして新興企業を買収し続けているのは、しばらく忘れていた若い起業家精神を同社に吹き込みたいとマリッサ・メイヤーCEOが考えているからだという。

米ヤフーのメイヤーCEO、男の子を出産

ヤフーのマリッサ・メイヤーCEO〔AFPBB News

 かつてネット広告市場を支配していたヤフーは、米グーグルや米フェイスブックといったその後に登場した新興企業に顧客を奪われていった。

 同社では過去5年で6人もCEOが代わるなど経営の混乱が続き、その間多くの優秀な人材が流出した。ニューヨーク・タイムズによると数年前までのヤフーの社内には敗北感が漂っていたという。

 こうした状況を打開すべくメイヤー氏が昨年7月にCEOに就任し、現在ヤフーの経営改革に取り組んでいる最中だ。CEO就任後同氏が行った新興企業の買収は6件。いずれもかつての買収とは異なり、創業者や開発チームといった人材の獲得を目的とする「アクイ・ハイア」と呼ばれる買収。

 メイヤー氏はモバイル向けサービスの強化を最優先課題と位置付け、若年層に人気のあるスマートフォンやタブレット端末向けサービスの開発を急いでいる。若い人材起用の背景にはこうしたメイヤーCEOの意向があると同紙は伝えている。

過去のヤフー、買収した事業はその後に衰退

 こうして見ると、やはりヤフー復活のカギを握るのは社内の開発者と言えそうだ。というのも同社はこれまで、買収した企業のサービスを放置し、さらなる開発を続けなかったために、後に現れた新興のサービスに先を越されてしまったという苦い経験がある。

 例えば、同社は2005年にソーシャルブックマークの「デリシャス(Delicious)」と写真共有サービスの「フリッカー(Flickr)」を買収した。前者は、買収当時多くの利用者を抱えていた人気のサービス。

 しかし買収後はその利用者数規模やブランド力に安心してしまったのか、当時のヤフーはそれ以上開発に力を注がず、デリシャスはまもなくして主力事業から外れた。結局この事業はその後、ユーチューブの共同設立者に売却している。

 後者のフリッカーは今でもヤフーの事業。だが、こちらも買収当時に比べて勢いがなくなり、その間に米グーグルの「ピカサ(Picasa)」などの競合サービスが台頭した。