「日本の自動車産業は、このままで大丈夫だろうか・・・」。フォルクスワーゲンの最新ものづくりの現場を前に、ひたすらその思いが募っていった。
先日、フォルクスワーゲン・グループの年次決算報告記者会見に出席したのだが、その際、最新のゴルフ第7世代モデル(以下、「ゴルフ7」)が生産されているドイツ・ヴォルフスブルク本社工場を見学する機会があった。
短い時間の中、「駆け足」で車体組み立てと最終組み立てのライン脇をトロリー(連結台車)に乗ったまま見て回るものだったが、2012年初めに発表されたフォルクスワーゲンのグルーブ全体を包括する新たなクルマづくり多様化構想「MQB」(「Modulen Quer Baukasten」の略。英語では「モジュラー・トランスバース・マトリクス」)をある程度までは咀嚼して現場に立った私としては、見るべきものが多く、様々に考えを巡らせることの多い時間となった。
この「MQB」については、まだ文書と画像だけが公開された昨年春の段階で読み解いた内容を、「プラットホーム方式の先を行くフォルクスワーゲンの新構想『MQB』」として、このコラムでも紹介している。こちらにも目を通していただければ、今回の現場見学の中で私が見て、考えたことを理解していただく一助になると思う。
プラットホーム方式の先を行く「MQB」の車体骨格モジュール化
ヴォルフスブルクにおける自動車製造は、第2次大戦直前の1938年、フォルクスワーゲン(タイプI。いわゆる「ビートル」。当初の呼称は「KdF」)を生産するために一面の湿地を干拓して工場を、そして町も作ったところから始まる。その当時の煉瓦造りのキュービックな建屋は今も広大な工場の前面部分として残されていて、ゴルフを含んでここで製造される車種のボディを鋼板から打ち抜き、組み立ててゆく「車体製造工程」が、今はその背後に広がっている。
そこで組み上げられたボディシェルは塗装工程を経て、ずっと奥にある巨大な建屋「ホール54」に移送され、ここに複数の最終組立ライン(今回見て回れたのは2ライン)が並び、様々な車種が次々と流れ、組み上げられてゆく。
最近の自動車製造現場を見たことのある人にとって、その光景全体は決して珍しいものではない。問題はそのプロセスであり、ディテールにある。
「MQB」は、エンジンとトランスミッション、装備品をなどを「モジュール」化して様々な車種に展開する、というだけではなく、乗用車を量産する時に最も大規模な設備更新と投資を必要とするポディシェル、つまり車体骨格の構成とその組み立て方を「モジュール」としてとらえ、新しいつくり方を具現化しようというものだ。
フォルクスワーゲン・ブランドで言えばコンパクトカークラスに属するポロからゴルフ、さらにミドルサイズのパサート、3列シートのミニバンであるシャランまで、サイズの異なるモデルを「モジュール」の組み合わせでつくり分ける。それだけでなくセアト、シュコダ、さらにアウディ、もちろんVWまで、同じグループの中の4ブランドで同様の骨格を持つモデル群も同じ製造工程の中でつくり分けてゆく。