カンボジアを代表する穀倉地帯であり、「ライスボール」とも呼ばれるコメの一大名産地として知られる、カンボジア北西部バッタンバン州。

 その州都バッタンバン市からさらに西へ、今ではすっかり舗装整備された国道を車で約2時間走ると、カンボジアの西端に位置する特別市パイリンに達する。

 2001年、バッタンバン州の一部から特別市(行政区分上、州と同等の扱い)に昇格したパイリンは、タイとの国境沿いに位置し、古くから国境貿易の街として栄えた。 またルビーやサファイアなどの宝石の産地としても知られ、今でも市内には宝石商や研磨業者が点在している。

「セカ就」を目指す若者たちがカンボジアにやって来た

カンボジアの西端、パイリンのタイ国境ゲート。 この時期はキャッサバ芋の収穫最盛期にあたりトラックの出入りも多い。写真はタイ側に入ったエリアからカンボジア側を撮影したもの。少しはみ出るくらいであれば、意外とゆるく出入り可能(著者撮影、以下、特記のあるもの以外は同様)

 国土のほとんどが平地であるカンボジアの中では珍しく、起伏の多い丘陵地帯が続くパイリンは、地形的にコメ作りに適さないためか、農業生産物はキャッサバ(タピオカの原料となる芋類)や飼料用コーンなど、比較的地形を選ばず育つ作物が主流となっている。

 パイリン市内を抜けさらに西へ、タイとの国境地帯に広がるオクラ畑では、いま収穫期を迎え、バスケットを首にかけたカンボジア人の農民たちが、手慣れた手つきでサイズや色を選びながらオクラ摘みに勤しむ。

 本年2月、それらの農民に交じって、日本から来た若者たちが炎天下の畑でオクラ収穫に汗を流していた。

 観光地と言うには程遠い、それどころか通常日本人が足を踏み入れることはほとんどない僻地にまで踏み込んで、真剣な眼差しで現地農民の作業手伝いをする彼らは、日本から短期海外インターンシップのためカンボジアにやって来た、大学生を中心とする20歳前後の日本人若者たちである。

短期海外インターンシップ参加者が撮影した写真。カンボジア第2の街バッタンバン市にて、早朝に気合いのコール。ノリはやはり若い(写真提供:著者)

 日本国内の情報・人材事業大手リクルートが、昨年2012年1月10日にまとめたトレンド予測によると、2012年の就職領域のキーワードは、海外を意識して就職活動に取り組む「セカ就(せかしゅう)」。

 内向きで安定志向と言われがちな日本の学生たちの中に胎動している新たな兆しとして、「『いつかは海外』から『いきなり世界』へ、国境なき就活が始まる」との見方を示した(リクルート)。

 昨年後半あたりからよく耳にするようになった(筆者所感)このフレーズ。出元をたどれば、さすがは大手の発信力、と感心するしかないが、実際に昨年中盤あたりから、筆者が活動拠点とする新興国カンボジアに至るまで、このキーワードが示すような実例が目に見えて増えてきている。