中国の大気汚染問題が深刻だが、中国の人々はどんな環境で生きているのか。
安心、安全、健康、クリーン・・・、そんな言葉の真逆を行く社会では、すべてにおいて疑いを持つことから始めなければならない。この中国で生き抜くには、相当にタフであることが求められる。
例えば買い物。果物を買いにスーパーに行くと、売り場で長考を強いられる。甘さは? 農薬は? 産地は? 中国ではオレンジの表面にオレンジ色を着色する事件があった。イチゴは皮を剥いて食べるわけにはいかないので、なおさら手が出ない。加工食品は得体がしれない。どの地域? どの工場? 何を使っているのか? などと考えると、結局手ぶらで帰ってくるしかない。
物に愛着を持たない中国の消費者
2月下旬、筆者は上海に住む中国人の友人、蔡さん(仮名)宅を訪れた。蔡さんは「老公房」と呼ばれる国有資産の払い下げ住宅に住んでいる。いつも気になるのが共用部分だ。廊下、階段がゴミと埃だらけなのだ。この汚さに、なぜ住民が平気でいられるのか、いつも不思議に思う。
台所で夕食の支度をする蔡さんが使っていたのは、なんと330元もする食用油だった。日本円にすれば約5000円(4.5リットル)の油だ。蔡さんは「安い食用油は信じられない。とにかく高いものなら安全だと思って」と言う。どのブランドが安心安全なのか、もはや国民にとって判別不能。高いものなら安心と信じ込まざるを得ないのだ。
今度は、台所のゴミ箱を見て目を疑った。そこにはドサッと捨てられた彼女のハイヒールがあった。その上にバナナの皮と野菜の切りくずがべったりとくっついている。いずれも彼女にとっては「不要物」だろうが、「同じゴミ」とはいえ、そういう捨て方に気分が悪くなった。