AsiaX(アジアエックス) 2013年1月21日

 中世ヨーロッパの石工たちの組合が前身とされ、16世紀に組織された世界最古の友愛団体「フリーメイソン」。18世紀の植民地時代に大きく拡大し、現在では、著名な政治家、ビジネスマン、文化人、ヨーロッパのロイヤルファミリーをも含み、世界に約500万人の会員「フリー・アンド・アクセプティッド・メイソン(以下メイソン)」がいます。

 そのメイソン達が集う会館「フリーメイソン・ホール」のひとつが、シンガポールのアルメニアン・ストリートにあることを知る人はあまり多くありません。

ホール設立から133年、シンガポールの発展とともに

フリーメイソン・ホール。外壁にはフリーメイソンのトレードマークである直角定規とコンパスのシンボルが。コンパスは道徳、直角定規は真理や公平を表す。建物脇にガラス張りのレストランが増築され、近々オープンの予定。一般も利用可能

 この建物は、1879年にメイソンであるイギリス人のトーマス・カーギルの設計によって建てられた後、1910年に今の形に改修されました。

 ファサードなど建物の外壁は、ドーリア式の円柱がある古典主義のデザインで、同時期に建てられたイギリスの官公庁舎によく見られるパラディアン様式です。2005年、国家遺産庁(NHB)より歴史的建築物に指定されました。

 総工費750万シンガポールドルをかけて昨年完成した改装工事により、老朽化した電気系統や内装が修繕され、新たに別館も完成。建物内には、テンプルと呼ばれる講堂、今後展示ギャラリーになるというステンドグラスで彩られた回廊、会員のみが利用できるバー、オフィスなどがあります。

テンプル(講堂)の内部。入会の儀式や各ロッジの会合が行われる。メイソン独特の思想を表す工具類やシンボルが設置され、壁には歴代幹部メイソンの名が連なり、厳粛な雰囲気

 中でも、メインのテンプルには厳かな雰囲気があり、世界中のフリーメイソン・ホールに共通する市松模様のフロアに星空がペイントされたドーム、東の方向に据えられたランクの高いメンバーが座するチェンバー、四方の壁には、この地域の歴代のロッジ(支部)の長の名前が刻まれています。

 世界規模のネットワークと伝統的な相互扶助の精神、そして会員であることが社会的なステータスでもあったことから、シンガポール創成期に関わった著名な欧米人達の中には、多くのメイソンがいて、シンガポールを見出したトーマス・ラッフルズ卿もその1人です。

 1845年にシンガポールで初のロッジが設立され、後にアジア人会員も増えていきました。第2次大戦中の日本軍占領時代は、フリーメイソン・ホールのテンプルは、家具のすべてが取り除かれ、米を備蓄する倉庫に使われたとか。

 終戦後、ロビンソン・デパートの社長だったメイソンから現在の家具類が寄付されたんですよと、今回案内してくれたメイソンで血液の専門医でもあるロナルド・ンさんは言います。