第85回アカデミー賞が24日(日本時間25日午前)発表される。昨年は大統領選挙の年だったこともあってか、今回の作品賞ノミネート作には米国の歴史や政治をテーマとしたものが多い。

 奴隷制などがテーマの「リンカーン」「ジャンゴ 繋がれざる者」や、米国とイスラム世界との現在進行形の関係史「アルゴ」「ゼロ・ダーク・サーティ」といった作品である。

同時多発テロからビンラディンを殺害するまで

アルゴ

 そんな中から、先週末より日本でも公開されている『ゼロ・ダーク・サーティ』(2012)を中心に今回は話を進めていきたい。

 2001年9月11日の同時多発テロに始まり、2011年5月潜伏先を急襲し殺害するまで、オサマ・ビンラディンを追い続けたCIA(中央情報局)女性分析官の物語である。

 既に『アルゴ』(2012)が描いたイランイスラム革命については「イラン米国大使館人質事件秘話」で詳述しているので、そこから2001年に至るまでの『ゼロ・ダーク・サーティ』前史と言うべきものを、まずは、簡単におさらいしておこう。

ジャンゴ 繋がれざる者

 イスラム革命が蔓延するとの脅威は、1979年12月、イラン東隣のアフガニスタンにソ連が侵攻する原因の1つともなった。

 『君のためなら千回でも』(2007)には、そんな時代となる前のアフガニスタンののどかな生活が描かれており、スティーブ・マックィーンに憧れる子供たちなど、ほかと何ら変わらない姿がある。

 しかし、戦争となり一変。以後一度としてその風景を取り戻すことはなかった。

 深みにはまっていった戦いは、ソ連軍が支援する共産勢力政府に対し、米国はCIAを通して反政府勢力ムジャヒディンを支援するという冷戦構造を示していたことは、シルベスター・スタローンの人気シリーズの一篇『ランボー3 怒りのアフガン』(1988)でも描かれている。

 そしてビンラディンもそのムジャヒディンの一員で、エジプトの急進的イスラム主義組織イスラム集団の精神的指導者だったオマル・アブドルラフマンとの関係も深めることになる。