日本のマスコミの多くは、中国や北朝鮮による軍事関連事件が生ずると、まずはアメリカの動向、すなわちアメリカ大統領はじめ政府高官の公式声明から、知日派と称される“お決まりの”アメリカ人の論評などまでを、あたかもアメリカ全体の意見であるかのごとく紹介するのが常態化している。その姿はまるで日本の軍事的対米従属を強化する尖兵となっているようである。
またもや米国の反応を“我田引水”
今回の北朝鮮核実験に関しても、ちょうど翌日にオバマ大統領の2013年度一般教書演説が行われたため、アメリカ政府がどのような反応をしたかを“お決まりの通り”に報道した。そして、その報道内容は誇張あるいは牽強付会とまでは言えないまでも「アメリカは北朝鮮に対して強硬な態度を示すことによって、日本を核兵器の脅威から護ってほしい」といった願望を裏付けするような論調で、さもオバマ大統領が一般教書演説において、北朝鮮の核実験を極めて深刻な脅威と受け止めて強烈な警告を発したかのような報道が目についた。
確かに一般教書演説では、北朝鮮の核実験実施を名指しで非難し「国際社会による制裁を覚悟せよ」といった警告を発している。しかし、核実験の前日には核実験実施の通告を受けたアメリカ政府にとっては、寝耳に水の実施というわけではなく、一般教書演説における核不拡散の文脈にバランスよく引用された具体的事件といった取り扱いであった。
ちなみに、「オバマ大統領が一般教書演説で具体的に北朝鮮の核実験を取り上げ強く非難した」といった報道からは、あたかも一般教書演説で相当この問題が重要視された問題であったかのようなニュアンスで受け止められかねない。
しかし実際には、オバマ大統領の演説のうちで外交軍事問題が占めた割合は2割程度であり、健康保険制度、移民法改正、産業・経済再生それに銃規制といった国内問題が中心であった。そのようにかなり分量が少ないと言える外交安全保障分野の、そのまた一部(2割以下)が、核不拡散に関する言明に割り当てられていた。
それは以下の通りである。
「米国は世界で最も危険な兵器の拡散を防止する努力を主導していく。北朝鮮政権は、彼らが国際的責務を果たすことによってのみ安全保障と繁栄を勝ち取ることができる、ということを心得ねばならない。われわれが昨夜目にしたような挑発行為は、われわれ(米国)が同盟諸国の力になり、われわれ自身のミサイル防衛を強化し、このような脅威に対抗する強固な行動を国際社会に取らせるように仕向けることにより、彼ら(北朝鮮政権)をさらに孤立させるだけである。
同様に、イラン指導者たちは、わが多国籍軍側が彼らが義務を履行するよう要求するために団結しており、われわれが彼らが核兵器を手にすることを妨げるために必要な手段を実施するゆえ、今こそ外交的解決の時期であるということを肝に銘じなければならない。