法政大学とアイエヌジー生命は、社員のモチベーションを高める中小企業の施策や、その具体的な取り組み事例について、2008年より共同で調査研究を行ってきた。
調査研究の結果は、2009年に書籍の『なぜこの会社はモチベーションが高いのか』(坂本光司著、商業界)、および『中堅・中小企業の社員の勤労意欲を高める方策等に関する調査研究』という冊子にまとめられた。
実際に高い成果を挙げている企業を訪れて行ったこの調査研究は、実践的であると同時に普遍性が高く、古びることのない内容である。そこでJBpressでは、法政大学およびアイエヌジー生命の協力を得て、冊子に収められた事例を順次転載していく(*)。
今回は北海道の住宅メーカー、ハウジングオペレーションアーキテクツである。

 1997年に設立されたハウジングオペレーションアーキテクツ(設立時の社名は「ハウジングオペレーション」)は、新しい時代の本物の住宅作りを目指し、林野庁、北海道、空知芦別木材協会の全面的なバックアップにより、原木の確保から製造、流通、設計、建築までを協業化した独自の住宅供給システムを確立した注文住宅の会社である。

 国内産の良質な木材を確保することは年々難しくなってきており、外国産の木材を安価で輸入しているケースが増えてきた。また、オーダーメイドではなく、似たような住宅が大量生産され、家に愛着が持てなくなる状況が多く見られるようになってきており、代表取締役の石出氏が目指す住宅とはほど遠い状況になっていた。

 この状況を変えるべく、「一番安いものを作ろう!」「一番良いものを作ろう!」という2つの思いを同時に叶えるために、考え抜いてできたシステムが同社の住宅供給システムである。

 従来、間伐材は建築資材に適していないと言われていたが、北海道立林産試験場との共同研究によって、建築資材として活用する道を開いた。同社は国産の良質な木材を安い価格で大量に確保し、自社工場でプレカットする産地直送システムで流通コストを抑え、設計から建築までを自社にて管理している。その結果、お客様の予算内で最も良い品質の住宅を提供することが可能となっている。同社は上記システムをすでに10年以上も前に確立し、今もシステムは進化している。

 特徴的なのは、宣伝広告費が売り上げの1%でしかないことだ。営業マンがいないため、仕事の受注は全て口コミである。

 口コミを計画的に作為的に呼び込もうとしている訳ではなく、お客様に喜んでもらう住宅を作ってきたことが口コミにつながっているとのこと。結果、北海道内では広く知れわたっている会社である。

「お客様が幸せになることが自分たちの幸せ」という思い

 社是や企業理念にもある通り、この会社は「幸せ」を大事にしている会社である。

 石出氏へヒアリングした際にも「幸せ」という言葉が多く出てきていた。この「幸せ」という言葉がこの会社の社員のモチベーションの源となっている。

 石出氏と社員のコミュニケーションの場は多数ある。月に1回は全体会議を行い、また、石出氏は今でも現場に頻繁に赴いているため、現場にいる社員との接点も多い。