法政大学とアイエヌジー生命は、社員のモチベーションを高める中小企業の施策や、その具体的な取り組み事例について、2008年より共同で調査研究を行ってきた。
調査研究の結果は、2009年に書籍の『なぜこの会社はモチベーションが高いのか』(坂本光司著、商業界)、および『中堅・中小企業の社員の勤労意欲を高める方策等に関する調査研究』という冊子にまとめられた。
実際に高い成果を挙げている企業を訪れて行ったこの調査研究は、実践的であると同時に普遍性が高く、古びることのない内容である。そこでJBpressでは、法政大学およびアイエヌジー生命の協力を得て、冊子に収められた事例を順次転載していく(*)。
第3回は 新潟県三条市のパッケージ印刷会社「中央製版」である。
中央製版は、現社長・小林吾郎氏の父、敬典氏が1962年に創業した会社である。製版業から数年で印刷業に転換している。
当時から三条市周辺の地域は、地場産業として今でも有名な、金物・工具・包丁や雑貨などの製造が大変に盛んであった。その製品を入れる箱の需要も旺盛だったことに着目した敬典氏は、パッケージ(箱)に特化していった。
現在の同社は、企画・デザイン・印刷・紙器加工の全工程を自社生産するトータルパッケージメーカーである。
全社員が毎月1つの「改善」を提案
現社長の小林吾郎氏は96年、28歳の時に同社へ入社し、2004年から代表取締役となった。小林社長の入社前から、三条市の地場産業は中国の安価な製品に押されていたが、検査やパッケージ作業は日本で行っていたため、業績は安定していた。
小林社長が入社した96年以降、技術の進歩で、検査やパッケージ作業まで中国で終わらせるようになり、10億円あった地元での売り上げが毎年10%というスピードで減少していった。
しかし同時期に、まだ2億円だった東京での売り上げを毎年10%以上伸ばし、現在では20億円の売り上げのうちの半分以上を首都圏が占めている。
同社の特長は、「納期対応」に絶対の自信を持っていることである。短納期での「スピード」「安定品質」を売り物にしている同社が、現在の「スピード」と「品質」を手に入れるためには、全社一丸となって取り組んできた「改善」の長い歴史がある。
現在の同社には、全社員が毎月1つの「改善提案」をする制度がある。必ず毎月1つの提案をすることは、社員にとっては大変な困難を伴うものであるが、そこには「苦しいくらいに真剣に考えてほしい」という小林社長の思いが込められているのである。