中国人民解放軍海軍江衛2型フリゲート「連雲港」(F-522)が海上自衛隊むらさめ型護衛艦「ゆうだち」(DD-103)に火器管制レーダー(FCR)を2度にわたり照射した。この事件を、アメリカのマスコミが一般的なニュースとして大きく取り上げることはなかった。また海軍関係者や専門家の間でも、今回のFCR照射それ自体が驚天動地の大事件というわけではないため、さしたる関心は持たれていない。

 実際に、中国海軍軍艦による海上自衛隊軍艦に対するFCR照射は今回が初めてというわけではないと考えるのは、海軍関係専門家にとっては常識である。国際社会の秩序など気にも留めない“無法者海軍”が相変わらず跳ねっ返りの行動をしている、といった侮蔑の感想を持つ程度の事案である。

ミサイルを発射した江衛2型フリゲート

 もちろん、それほど関心が高くないとはいえ、CNNをはじめとして事実関係紹介程度の報道はなされている。ただし、それらの報道はFCR照射そのものよりも日本と中国が尖閣諸島という無人島を巡って領有権問題をこじらせているいきさつの説明に重点を置いている。

 そして、中国国防省がFCR照射という事実そのものを否定し、中国外務省が日本政府を非難する段階に至ると、FCR照射自体よりも日中政府間の軋轢に対しての関心が高まっているといった状況である。あとは、日本政府が公表すると言っているFCR照射の証拠によって、日本政府と中国政府のどちらの言い分に信憑性があるのか? に関して若干議論が高まるものと思われる。

FCRロックオンは露骨な敵対的行為

 アメリカ海軍専門家たちは今回の中国フリゲートによるFCR照射それ自体にはそれほど強い関心を抱いていない。とはいっても、FCR照射そしてロックオンという行為自体を危険な行為ではないと考えているわけではない。

 FCR照射を大ざっぱにまとめると、まず第1段階として攻撃目標(敵の艦艇・船舶)の詳細な位置情報を確定するためにナロービームを目標に向けて照射しロックオンする。引き続き、ロックオンした目標にミサイルや砲弾などを命中させるために目標を捕捉しておくためにレーダーを照射し続ける。そして、射撃命令によりミサイルや艦砲を発射する。