またまた人民解放軍が性懲りもなくやってくれた。2月6日昼、北京で久し振りに米国の親しい友人とイタリア料理を食べていたら、突然筆者の携帯電話が鳴り出した。某国有力紙の東京特派員が「ぜひ聞きたいことがある」と申し訳なさそうに切り出した。

 一体何事かと尋ねたら、解放軍海軍の艦艇が海上自衛隊護衛艦に射撃管制用レーダーを照射したという。連載第201回目の今回は当初「北京の大気汚染と空気清浄機のバカ売れ」の話を書こうと思っていたのだが、ここは予定を変更し、1月末に起きたレーダー照射事件を取り上げる。

ロックオン

中国海軍艦が海自護衛艦にレーダー照射

日本の護衛艦に射撃用の火器管制レーダーを照射した中国海軍のフリゲート艦〔AFPBB News

 いつもの通り、まずは事実関係のおさらいから始めよう。各種報道によれば本事案の概要は次の通りだ。

●2月5日夜の小野寺五典防衛大臣緊急記者会見によれば、1月30日午前10時頃、中国海軍ジャンウェイII級フリゲート艦1隻から、東シナ海で警戒監視中の海上自衛隊護衛艦「ゆうだち」に対し火器管制用レーダーの照射があった。

中国海軍艦が海自護衛艦にレーダー照射

火器管制レーダーを照射したもう1隻の中国船〔AFPBB News

●似たような事件は1月19日午後5時頃にも起きた可能性がある。同大臣は、東シナ海において中国海軍ジャンカイI級フリゲート艦から海自護衛艦「おおなみ」搭載のSH60哨戒ヘリコプターに対し火器管制用レーダーが照射された疑いがあるとも述べた。

●これに対し、2月6日、中国外務省報道官は「報道を見てから関連の情報を知った。具体的な状況は理解していない。関係部署に聞いてほしい」とのみ述べ、この事案を中国外務省が知らなかったことを示唆した。

 レーダー照射というとあまりピンとこないかもしれないが、2月5日のワシントン・ポスト紙記事はより正確に「先週中国海軍艦船が日本の軍艦を火器管制レーダーでロックオンした(A Chinese military vessel last week locked its weapons-targeting radar on a Japanese warship)と報じている

 ご承知の通り、「ロックオン」とは武器を使用する前段階としてレーダーで攻撃対象を捕捉する行為だ。解放軍軍人もロックオンされることの重大さはよく知っているはず。安倍晋三首相は「不測の事態を招きかねない危険な行為」と述べたそうだが、これは決して誇張ではない。