従業員の自殺が相次いだ中国のアイフォーン工場がさらなる賃上げを発表し、話題を呼んでいる。これにより、中国のほかの工場でも賃金が見直されることになり、やがては賃上げが中国全土に波及する。
その結果、国全体で商品価格が上昇し、中国の輸出競争力の低下につながる恐れがあると報じられている。
アイフォーンの工場、賃金を2倍以上に引き上げ
台湾・鴻海精密工業は、傘下に製造会社の富士康科技(フォックスコン)を持ち、中国・深センの2つの工場で米アップルのスマートフォンや米デルのコンピューター部品などを製造している。世界最大のEMS(電子製品製造受託サービス)企業と言われ、グループの全従業員数は80万人に上る。
同社は6月2日、これまで1カ月900元(131.72米ドル)だった賃金を同月1日付で1200元(175.63米ドル)に引き上げたと発表した。しかし1週間も経たない6日の日曜日、10月から従来の2倍以上の2000元(約292.8ドル)にすると発表した。
背景には、ここ最近の中国の急速な経済成長と一人っ子政策による労働力の減少傾向があると米ウォールストリート・ジャーナルは伝えている。
富士康科技で自殺が相次いだり、ホンダの部品工場のような労働争議が多発しており、今、中国では、賃上げや労働環境の改善への圧力が高まっている。
「もはや中国の安い労働力に頼れない」と郭会長
鴻海精密工業の創業者で会長の郭台銘(テリー・ゴウ)氏は、「我々は転換点を迎えた。もはや中国の安い労働力に頼ることはできない」と述べている。
「中国の製造、サービス業界は賃上げすべきだ。中国政府も、労働者が経済成長に応じた恩恵を受けることを望んでいる」(同氏)