自民党は平成24(2012)年6月1日付で国土強靭化基本法案を練り上げていた。東日本大震災の甚大な被害を直視し、政権奪取後の政策目標にもしてきたが、政権を取り戻した現在はその具体化を目指している。

 しかし、マスコミ報道は「国土強靭化=被災地復興+耐震性公共事業」というような見方が多い。『文芸春秋』2013年2月号の「安倍新内閣 日本政治の復権はあるか」でも、識者たちは強靭化を災害復興としか見ていないように見受ける。

 政権を民主党に渡す前の自民党とは全く変わった「ニュー自民党」を選挙期間中も訴え続け、生まれ変わった自民党が提案した強靭化ということであるが、私見ではそのようには見えない。

ニュー自民党に求められる視点

 エネルギー危機が騒がれた1975年、筆者は米国メリーランド州にいて、自動車の給油が隔日に制限され、多くの旅行計画を断念せざるを得なかった。

 北東部ニューハンプシャー州の友人を訪ねたとき、家には10キロワットの非常用発電機が設置され、地下には半頭の大きさもあろうかという牛肉が保存されていた光景を今でもありありと思い浮かべる。

 トルネードや降雪災害などで、家から一歩も出られないこともしばしばのようであるが、そのつど発電機が稼働し、保存食が有効に機能していると最近のメールでも知らせてくれる。

 東日本大震災における甚大な被害が国土強靭化法案を生み出させた原動力であったことは言うまでもない。だからと言うべきかもしれないが、大規模災害に関心が行き過ぎた施策はコンクリートの厚化粧でしかなく、法案の内容を見る限りどこにもニュー自民党は窺えない。

 もちろん、「国土強靭化の基本理念」や、その具体化である「国土強靭化基本計画等」および「国土強靭化に関する基本的施策」からもいい香りは匂ってこない。

 基本的施策として12項目が列挙されているが、そのうちの7項目が「大規模災害発生時の」対策になっている。大震災が編み出させた国土強靭化であろうが、大規模災害を念頭に置きつつも、そこから垣間見えた国家の在り方、憲法からスタートする法体系などソフト面にも焦点を合わせることが必要であろう。

 そうした面が欠落しているように思うが、小論では法体系までは拡大し過ぎなので、ここではあくまでもハード面に限定して述べる。

 その第1は原発事故から直接的に起きたエネルギー問題であり、第2は同時に派生した放射能の問題がある。

 化石エネルギーは中国の莫大なエネルギー需要の高まりで逼迫すること必定であり、補填すべきエネルギーの大部を原子力に依存しようとしていた矢先の事故から、今後は否応なく再生可能なエネルギーの確保が重要な問題として認識されるようになった。

 大被害を被った東北の復興は政権交代で加速しているが、大きな視点から効率は悪いが太陽エネルギーなどの再生可能なエネルギーを少しでも自給できる態勢に国家が先頭に立つべきではないだろうか。