ニッケイ新聞 2012年12月20日

 日本企業の進出の足音が高まっている――。ブラジル日本商工会議所の会員社数(現地資本、外資系含む)が過去最高の341社(12年12月時点)となり、それまでの最高記録だった1990年の333社を上回った。

 341社のうち日本からの進出企業は200社、当地資本、外資系は141社(個人会員が6)。日本からの中国などアジアへの進出企業数に比べると当地進出はまだまだ始まったばかりとの印象だが、同会議所は目標として2018年には500社(うち進出企業350社)を目指している。

 「毎日のように企業訪問を受ける」と話す平田藤義事務局長は、進出増加の手応えを感じているようだ。今年の会議所訪問社数は270件(うち日本企業は160件)に及んだといい、以前のモノ作り産業、紡績などと違い、「自動車関連企業、貿易関係の進出が目立つ」と近年の特徴を指摘した。

 2012年の業種別訪問社の割合をみると、最も多いのが産業インフラサービス(39%)、情報通信・エレクトロニクス(22%)、生活必需品・ヘルスケア(10%)、自動車、住宅(8%)と続く。

 1970年時点での会員数102社(進出企業79社、伯、外資系企業23社)から始まり、79年には300社の大台に乗った。

 しかし、その後は日伯経済関係の「失われた20年」といわれる時代へ。85年に軍事政権から民政移管がありハイパー・インフレ、モラトリアムと伯国経済の混乱期が訪れ、会員数は80年代を通して頭打ち状態になった。

 1990年代、今度は日本側のバブル崩壊後の不況で目減りし始め、97年には再び200社台に落ちた。同時に、伯、外資系企業の割合が増え、日本進出企業と半々に。

 2008年のリーマンショックを皮切りに広がった世界金融危機の後、伯国の経済発展の潜在的可能性に日本企業から注目が集まりつつあり、どんどん会員数が増えているようだ。

 ただし、年間の新規加盟社数が30~50社で推移した“進出ラッシュ”を記録した1970年代半ばとは、まだ比べものにならない。

 だが、伯国は資源を持つとともに、中間層の成長が著しい「モノを売る」市場として中長期的に新たな地位を確立しつつあるようだ。

 一昨年来の進出以来、新店舗を増やしている牛丼「すき家」(現在8店舗)、12月に聖市セントロに南米第1号店がオープンする百円ショップ「ダイソー」の進出もその一例といえる。

注:伯=ブラジル、聖市=サンパウロ市

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