マット安川 元外交官の作家・佐藤優さんをお迎えして、日本の安全保障の実態をリポートいただきました。政府、官僚の動きから諸外国への対応、特に中国との有事についてシミュレーションしていただきました。

中国は現実的脅威。尖閣問題への性急な対応は日中戦争勃発の芽

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:佐藤優/前田せいめい撮影佐藤 優(さとう・まさる)氏
元外交官、文筆家。インテリジェンスの専門家として知られる。第38回大宅壮一ノンフィクション賞などを受賞した『自壊する帝国』の他、『獄中記』『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて』『3.11 クライシス!』『世界インテリジェンス事件史』など著書多数。(撮影:前田せいめい、以下同)

佐藤 現在、日本にとって最大の問題は中国です。本当に気をつけないといけません。どうつき合っていくか。このままでは中国との戦争はあり得ます。中国は潜在的な脅威だと言う人がいますが、間違えています。顕在化した現実的な脅威です。

 例えば、東京都知事選挙に猪瀬直樹(前副知事)さんが出ています。都が尖閣を買い取るために約15億円の寄付を集めましたが、彼のイニシアチブです。そのおカネは船だまりや灯台の整備に使うと言っています。

 今回の衆議院選挙で自民党政権ができれば、その方向で話をつけるでしょう。日本維新の会が政権に入るとしても、その方向で話をつけると思います。そうなれば確実に日中の武力衝突が起きます。

 国家には生き残りの本能があります。日本は憲法9条で交戦権が否定されているとはいえ、自衛権は当然持っています。もし、尖閣諸島に中国が上陸してくるようなことがあれば、日本は当然反撃する。

 そしたら日本が勝ちます。海上自衛隊、特に潜水艦の能力、航空自衛隊の情報収集機のレベルが全然違い、戦いになりません。その点では自衛隊を信頼してまったく問題ないです。

日中紛争、日本が武力で勝てば国際社会の反発は必至

 これは都知事選挙の後にすぐにでも出てくる可能性がある話です。そのへんを外交評論家らはどの程度真剣に考えているか。外務省は分かっていますね。ですから外務省との軋轢はそうとう出てくると思います。

 ただ私は、外務省の事なかれ主義とは別に、戦争という形での問題解決には反対です。中国と戦えば日本は勝ちます。しかし、その後の外交や総合的な国益を担保できるのかということです。