急落するユーロ相場(フランクフルトの欧州中央銀行=ECB=本部、中野哲也撮影)

 ギリシャ発の財政危機がユーロに下落圧力を掛け、「世界的な景気回復に急ブレーキが掛かるのではないか」という悲観論が台頭し始めた。既に2009年2月以降の株価回復の何割かが削り取られている。PIIGS(ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン)の財政問題が二番底懸念に発展する今回の過程でも、投機筋と格付け機関の果たした役割が大きい点を見過ごしてはならない。

 一般的な投資家はユーロ圏への投資を抑制し、2010年4月までに資金配分を引き下げている。ギリシャ国債の償還を控えて、5月にはユーロ圏でゴタゴタが起きるのを予想できたからだ。

 4~5月に行われた調査では、投資家はユーロ圏の成長性に懸念を抱き、資金を引き揚げたという。これは5月に発表された投資家別の米国債保有状況などでも裏付けられている。しかしユーロ相場の急落が始まった時期は、こうした投資家の行動とは幾分タイムラグがある。

独り歩きを始めた日米英のCDS、格付け引き下げの懸念も

 最近話題のソブリンCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)。だが、どの程度取引実績があり、それが本当に実態を表しているのかなど疑問は尽きない。このため流動性の乏しい国のCDSでは、一部の投機家が市場に及ぼすインパクトが非常に大きくなる。

 例えば日本のソブリンCDSを買おうとしても、売り手が見つからず、気配だけが上昇してしまうのが実情だ。実力より需給を表した数値と見た方がよい。投機筋がその気になれば、幾らでも大きく動かすことも可能であろう。

 2010年4月の日銀のリポート「ソブリンCDS:市場の現状と変動要因について」にも記載されている通り、確かに南欧のCDS取引高は多いようだ。一方、日本や米国、英国などはほとんど取引実績がない。それなのに、日米英のソブリンCDSが拡大しているという表面事象だけが大衆の知るところとなり、独り歩きを始めている。ベンダーで表示されている値が「正しいもの」として新聞紙面を飾ってしまうのだ。

 投機筋がCDS拡大をちらつかせて財政政策を悪玉に仕立て上げ、空売りで儲けるために株価下落を狙っても不思議はない。CDS拡大が国家に対する格下げをもたらすなら、本来必要な財政出動が棚上げされてしまい、景気回復を遅らせてしまう。

「AAA」のお墨付きでも、ある日突然消える「リスク分散効果」

 格付け機関がサブプライム関連などの証券化商品に対して「AAA」のお墨付きを与えながら、ある日突然、投資不適格の水準まで何ノッチも引き下げ、「100年に1度」の金融危機を引き起こした。