中国の航空母艦「遼寧」に艦上戦闘機「J15」が着艦した。

 飛行機が空母に着艦する場合、尾部についたフックを甲板に張られたワイヤーロープに引っかけるのだが、このロープは強い衝撃に耐える必要があり、それは米国とロシアでしか作れないとされる。

 ロシアは「遼寧」の母体となった中古空母を中国に売ったものの、着艦に必要なロープを作る技術は教えなかった。そのために、航空機が着陸できるようになるにはかなりの時間がかかるとされていたが、中国はさほど時をおかずに戦闘機を着艦させることに成功した。中国は世界の先端技術をすぐにものにしてしまう。

 中国製と言えば、安価であるがすぐに壊れるというイメージがある。しかし、世界の家電市場を席巻し始めたハイアールを挙げるまでもなく、それは一昔前の話である。日本製には及ばないものの、実用上ほぼ満足できる水準になっている。その上、安いから売れる。もはや、中国を開発途上国と見ることはできなくなっている。

GDP5000ドルと1万ドルの間にある壁

 それでは、中国は本当に先進国になったのであろうか。先進国と途上国の違いを表すものに1人当たりのGDPがある。大体の目安だが、1人当たりのGDPが1万ドルを超すと先進国、1000ドル以下だと途上国になる。1000ドルと1万ドルの間が中進国だが、現在、中国の1人当たりGDPは約5000ドルであるから、「中進国」ということになる。

 それに加えて、ジェット戦闘機を空母に着艦させるほどの技術力を保有している。中進国から先進国への道を進んでいるとしてよいだろう。

 しかし、だからと言って中国がこのまま順調に先進国になることは難しい。それは、1人当たりGDPが5000ドルから1万ドルの辺りに壁があり、それを乗り越えるのが大変であるためだ。

 情報の拡散が進む現在、技術面において開発途上国が先進国に追いつくことは、容易になっている。中国だけでなくインドも空母や核を搭載したミサイルを保有している。それでは、なぜ途上国が先進国になる上で、1人当たりGDPが5000ドルから1万ドル付近に壁が存在するのであろうか。