今回から、交通システムに焦点を当てた日本の地域振興策について、コラムを書かせていただくことになった。

 筆者は以前、東京大学で自治会活動に携わっていたことがある。その活動に関して、ある方から取材を受け、JBpressに記事が掲載された。そこで初めてJBpressというメディアを知ったのだが、日本の地方交通システムを独自に研究している筆者にとって、地方都市にフォーカスを当てて、地方活性化を応援している点が大いに関心を引いた。

 筆者の国籍は中国だが、生まれも育ちも日本である。子どもの頃から鉄道やバスが大好きで、趣味が高じて、日本各地に行っては実際に現地の公共交通機関を利用し、そのあり方を考えるようになった。

 日本の個々の交通システムは世界に見ても比較的完成度が高い。だが、経済合理性の観点から見ると、「こうしたらいいのに」と思うような不合理な点も数多くある。また、地方の交通機関については、ユーザーの視点が欠落していると思われることが往々にしてあり、利便性向上の余地は大きい。例えば、私が見る限り、鉄道とバスの接続がうまくいっている地域はそう多くない。交通網全体の完成度は必ずしも高いとは限らないのだ。

 人口減少、少子高齢化に悩む地方にとって、公共交通機関の維持・発展は、来街者や自動車を運転できない若年層・高齢者の足の確保はもちろん、都市のスプロール化の防止・中心地機能の復活につながり、地域活性化のカギの1つになるはずだと考えている。そうした話を編集部の方にしたところ、興味を持ってくださり、「地域振興につながるコラムを」という話をいただいた次第である。

 まず、東日本大震災の被災地で始められた、鉄道に代わる交通システムから話を始めたい。

BRTは鉄道とバスの「いいとこ取り」

 東日本大震災では、三陸地域を走るJR東日本の鉄道路線が多く被災した。いまなお、レールや駅施設などが跡形もなく流されてしまったままの地域が少なくない。被災地が復興し、元の活気を取り戻していくうえでも、信頼できる公共交通機関の復旧は急務だろう。若年層の流出防止にも重要だ。

雑草で覆われた気仙沼線「南気仙沼」駅のプラットホーム。線路は流されたままで復旧の気配はない。

 こうした中、JR東日本は、鉄道復旧にかかる莫大なコスト負担を回避し、かつ、鉄道よりも早期に復旧させるために、気仙沼線と大船渡線をBRT方式によって復旧する方向であるという。

 BRTとは「Bus Rapid Transit」の略だ。日本語にすると「バス高速輸送システム」で、専用道にバスを走らせるものである。つまり、鉄道ではなくバスにすることにより、レールの維持費や車両取得費などのコストを大幅に削減しつつ、専用道を用いることで、鉄道並みの定時性・高速性にすぐれた交通機関にするというものである。