尖閣諸島問題は、中国漁船の体当たり事件から石原慎太郎都知事が購入の意思を示し、日本政府が国有化したことで中国政府が激怒したという推移をたどっています。
これまでの経過を見て、日本政府の不手際を批判する人がいます。例えば、日本政府は石原都知事率いる東京都が購入するより、政府が購入した方が中国の反発を和らげられると考えたのが間違っていたと彼らは主張します。本当にそうでしょうか?
中国が防衛線として東シナ海や南シナ海の制海権を取りたがっているのはよく知られています。まずは第1列島線と呼ばれる沖縄や台湾周辺の制海権を握り、最後には第2列島線と言われるフィリピンの太平洋側数百キロ東まで制海権を保持したいわけです。
第1列島線の確保目標は2010年でした。日本側からすると唖然とせざるを得ませんが、中国側から見るとすでに計画に遅れが生じています。
中国がこうした計画を達成するには、第1列島線だけでも、尖閣諸島だけでなく沖縄も(そして台湾も)領有しなければなりません。日本や台湾、そしてアメリカの軍事力が強力であるため簡単に手出しはできませんが、やる意思があるのは間違いないでしょう。実際は、東京都が買おうが日本政府が買おうが、あるいは以前同様領土問題を棚上げしようが結果は同じではないでしょうか?
手強いファビウス一族を助けたハンニバルの真意
<指揮官は、何をおいても、巧妙に敵の軍勢を分断することが必要であって、敵勢が信頼をよせる参謀たちに嫌疑がかかるように仕向けるとか、敵がその軍隊を分割し、しかもそのためには弱体化が必定な要因を相手に与えるかだ。>
(「戦争の技術」~『マキァヴェッリ全集1巻』筑摩書房、マキァヴェッリ著、服部文彦・澤井繁男訳より)
ハンニバルが率いるカルタゴ軍は、カンナエの戦いでローマ軍の主力部隊を壊滅させた後、ローマ近郊まで進軍します。ところが、主力部隊が壊滅してもローマは降伏する気配がありません。住民は武装し、奴隷にも武器を持たせて最後まで戦う気満々です。
確実な勝利を目指すハンニバルは念には念を入れ、謀略を仕掛けました。ローマ近郊を焼き払うとき、ファビウス・マクシムズの一族だけは助かるように工作したのです。