国防の要諦は、まずはいずれにも手出しをさせぬ、その気を起こさせぬ、という力の保持であり、また、何か事が起こりそうならば、それに先んじて事態を想定し予防策を整えることであろう。
しかし、わが国はこの両方ともなおざりだと言わざるを得ない。普天間移設問題を混乱に陥れ、基地はいらない、オスプレイは出ていけと日米同盟を自ら揺さぶり、中国・韓国・ロシアに「その気」を起こさせた。
そして、国際情勢を見るべき時にも政局に釘付けになりがちな私たちは、世界で何が起きているのか考える暇がなく、すでに起きたことへの対処しか今のところできていない。
ドロボウが近寄れない態勢を築くのが国の防衛であり、「ドロボウが出てから捕まえる」がごとき国防ではならないのだが、今の日本は目の前にドロボウがいても手をこまねいているのが実情だ。
実戦と紙一重だったペルシャ湾掃海訓練
前置きが長くなったが、9月は政府による尖閣諸島の国有化、それを受けての中国でのデモ、代表選に総裁選とニュースが目白押しで、わが国にとって重大なトピックスが大きく取り上げられる余地がなかった。
それは、海上自衛隊掃海部隊によるペルシャ湾での大規模な国際掃海訓練だ。9月16日から27日までの2週間近くにわたり、30カ国ほどが参加した。海自は掃海艦「はちじょう」と掃海母艦「うらが」を派遣している。
ペルシャ湾やこの周辺の海域は、原油輸送の大動脈だ。日本の原油自給率はわずか0.4%で99.6%は輸入、そのうち86.6%は中東に依存している。つまり、私たちの日常生活の安寧は、この海域が無事に通過できなければ決して得られないと言っていい。
ところが、核開発疑惑に対する圧力に反発したイランが、ペルシャ湾口であるホルムズ海峡を機雷によって封鎖することをほのめかし、この生命線であるシーレーンに暗雲が立ち込め始めたのだ。