最近、日本人のあいだで、海外投資がブームになっている。円高は輸出産業を中心とする日本企業を苦しめている一方、個人投資家にとっては千載一遇のチャンスと映っているようだ。

 国の将来に漠然とした不安を抱きながら暮らす日本人が増え、東日本大震災や原発問題がさらに不安を煽る。海外の情報が瞬時に手に入るようになった今、グローバル化の流れを止めることはできない。海外投資についても「一部の富裕層が行うもの」というのは過去の話となった。

巨大な人工木「スーパーツリー」が出現、シンガポール

海外投資への関心が高まっている(写真はシンガポールのガーデンズ・バイ・ザ・ベイ)〔AFPBB News

 サラリーマンだけでなく、年金生活者、主婦やアルバイト学生も海外の動きが気になり始めている。海外に誰でも行けるようになり、インターネットで航空券とホテルを予約すれば、すぐにでも海外に行くことができる。「表向き」には、海外は身近になった。

 一方、海外投資についてはネガティブな見方も根強い。日本から資産を国外に移す動きは「日本を見限る背任行為」のように捉えられ、裏切り者のレッテルを張られる。

 海外投資を斡旋する悪徳業者の噂も後を絶たず、「海外投資はだまされるもの」と考える投資家も多い。それでも、海外投資熱はこれを凌駕する潮流になりつつある。

 海外投資の大衆化が進むなか、「これまでのスタンス」と「これからの行動」に揺れる個人投資家が急増している。日本国内のことだけを考えていればよかった投資家が、いかにして海外と向き合うべきなのかという新しい問題に直面している。にわかに海外に向かおうと決めたとしても、その理解は一朝一夕では達成できない。

「にわか」海外投資家の誕生

 これまでは日本国内一辺倒だった個人投資家が本格的に海外に向かい始めている。人口減少、少子高齢化、膨大な国の借金、リーダー不在の政治、大企業のリストラ、非正規雇用の増加、年金問題、デフレなど、日本が抱える問題や暗いニュースは枚挙に暇がない。

 新聞や雑誌、投資関連書籍は「富裕層が国外に資産を移し始めている」「海外に移住する日本人が増加」などと、日本で暮らし、そこに資産を置いておくことに対する警戒感を煽る。世界経済の動向が直接日本経済に影響を与えるようになり、海外の動きも無視できなくなった。海外に向かう機運はどこを向いても見つけられる。

 海外に向かう原動力は日本の将来に対する不安だけではない。先に述べたような問題から生じる日本の将来に対する不安は、どちらかというと短期間で醸成されてきたものではなく、「何となくヤバいのは分かっているけど、ある日突然変わるものでもない」という認識だ。