過日、旧知のエコノミストからメルマガが届いた。欧州中銀の大胆な域内国債買い入れ措置に関し、このエコノミストはこう表した。

 「欧州危機の病巣を摘出することなく、モルヒネを打ってごまかしている」・・・。

 モルヒネという言葉に触れた際、私の頭に我が国の光景が浮かんだ。日本経済もなんとかモルヒネを打ってごまかしてきたのではないか、ということだ。日本独自のモルヒネ、政府による産業界への各種補助金の功罪に触れてみる。

V字回復したかに見える自動車業界だが・・・

 7月末から8月初旬にかけ、日本の大手自動車メーカーが相次いで2012年4~6月期の四半期業績を発表した。

 トヨタ自動車の同期の営業利益は3531億円となり、前年同期の1079億円の赤字から急角度のV字回復を果たした。同社の同期売上高は前年同期比59%増の5兆5015億円となった。ホンダはどうか。営業利益は前年同期の7.8倍となる1760億円を記録した。

 言うまでもなく、昨年、日本の大手メーカーは東日本大震災の影響を受けた。サプライチェーンが甚大な被害を受けたほか、タイのバンコク近郊工業団地の大洪水被害も加わり、「部品が届かないために車が完成せず、売りたくとも在庫がない状態が続いた」(米系証券アナリスト)という悲惨な状況に直面した。

 東日本大震災の発生以降、各社は生産ラインの復旧に努め、世界市場で欧米やアジア新興国メーカーに奪われていたシェアを奪回しつつあるのは間違いない。

 大手各社の四半期業績が発表された直後、私は証券会社の自動車担当アナリストらと会い、今後の日本メーカー復権のシナリオを探ろうと試みた。