AsiaX(アジアエックス) 2012年08月06日
8月9日の建国記念日を控えた先月、衝撃的な二つの出来事がありました。ひとつは、アンモキオ地区のHDBの一画に掲げられていたシンガポール国旗を13歳の女の子が燃やして逮捕された件、もう1件はホーガン地区のHDBに住む54歳の女性が本来シンガポール国旗を掲げるべきところに中国国旗を掲げていたとして警察の事情聴取を受けた件。
いずれも、当事者がシンガポール人であったことに非常に驚きました。以前であればまず考えられないことで、近年の野党の台頭や、特に若年層にみられる与党離れなど、シンガポール国家や政府に対する国民の対応の変化を表す一例ともいえます。
2004年にジョージ・ヨー外相(当時)が国連での演説で台湾の独立派の動きを批判したことから、台湾で抗議運動が起こり、シンガポール国旗が燃やされるという事件が起きた時は、外国での過激な行動に過ぎないという捉え方でした。
しかし、先月のシンガポール国旗をめぐる二つの出来事は、国内でも大きなニュースとして受け止められました。
シンガポールでは、建国記念日の1カ月ほど前からシンガポール国旗の掲揚が政府から通達され、オフィスビルやHDBなどにも国旗がずらりと並びます。その印象や建国記念日のパレードの盛り上がりなどからも、シンガポール国民は愛国心が強い、というイメージがありますが、やはり皆が皆というわけではなくなってきているようです。
当欄でこれまでにも触れてきたように、シンガポール政府は独立以来、多民族で構成された国民の結束を固めることに注力してきました。これまでとは違う動きが表面化していることを国としてどう捉えているのか、これからどうなるのか、気になるところです。
かたや日本では、5月末に自民党から国会に提出されたいわゆる「国旗損壊罪新設法案」が議論を呼んでいます。この法案の是非はここでは論じませんが、日本という国を大事にする気持ちの表れとして、日の丸を掲げる機会はもう少しあっても良いのではないかという思いを、今年も建国記念日を前に強くしています。
注:社説「島伝い」より。掲載の写真は、転載にあたって加えました
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