自衛隊の装備品は、輸出してもそう簡単に売れないというのが定説となっているが、そんな言葉を横目に、数々の国から垂涎の的となっているものがある。

 海上自衛隊の救難飛行艇「US-2」だ。かつて帝国海軍の飛行艇として活躍した「二式大艇」(二式大型飛行艇十二型)を製造した川西航空機が、現在は新明和工業(兵庫県宝塚市)としてその技術を同機につないでいる。

 現在、海自では救難飛行艇を「US-1A」と「US-2」合わせて7機体制で運用している。US-1Aは戦後初の国産哨戒飛行艇「PS-1」を改良したもの。さらにグラスコックピット(液晶表示)による「フライ・バイ・ワイヤー」(コンピューター制御)導入など能力向上したものがUS-2となった。

「上野の不忍池でも降りられる」超低速飛行能力

 かつて米軍が二式大艇を鹵獲(ろかく)した際、同機の性能を目の当たりにし、改めて日本の技術力に驚愕したと言われるが、今なお同社が作り出す飛行艇技術は他国の追随を許さない。

海上自衛隊の救難飛行艇「US-2」(ウィキペディアより)

 US-2の魅力は、何と言ってもUS-1Aでは成し得なかった波高3メートルでも運用可能な能力だ。木の葉のように揺れる荒波の中でもエンジンを止めずに海面を航行することができるようになった。

 航続距離は4500キロ、巡航速度は時速約480キロ。いざとなれば超低速での飛行も可能で、まるで空中で止まっているようだという評判だ。これは、世界で唯一、動力式高揚力装置である境界層制御(BLC)装置を実用化したことによるもので、狭い場所でも降りられるのも大きな特徴である。

 「試すことはできませんが、上野の不忍池でも降りられると思います」と同社関係者は胸を張る。

 さらに、独自の薄型波消し装置などの効果で、着水時の飛沫や水流による機体構造やエンジン、プロペラの損傷を防ぐことができる。