米アップルのタブレット端末「アイパッド(iPad)」やスマートフォン「アイフォーン(iPhone)」などを受託生産する台湾企業の中国工場で、10~20代の若い工員の自殺が相次いでおり、波紋が広がっている。
問題となっているのは、台湾・鴻海精密工業傘下の富士康科技(フォックスコン)の中国・深セン工場。同社グループは世界最大のEMS(電子製品製造受託サービス)企業と言われ、アップルや、米デル、米ヒューレット・パッカード(HP)、フィンランドのノキア、ソニーなどの製品を生産している。
今年に入って10人が死亡
この工場で5月26日、工員の1人が社員寮から転落し、死亡した。今年に入って起こった飛び降りはこれで13件。死者数は10人となった。そのほとんどが10代という。最後の飛び降りは、創業者で会長の郭台銘(テリー・ゴウ)氏が台湾から駆けつけて記者会見を開いた日の夜だった。
米ニューヨーク・タイムズの記事によると、アップルなどがこうした事態を受け、工場の労働環境などに問題がないか調査している。ただ、今のところ原因は不明で、中国の一人っ子政策後に生まれた若い世代特有の現象とも、中国社会の問題とも言われている。
郭会長らは26日の記者会見で、徹底的に原因を究明すると述べ、メンタルヘルスの専門家に調査を依頼したり、ビルに転落防止の安全ネットを設置したりすると語っていた。
充実した職場環境と説明するも実態は軍隊式?
同社グループの全従業員数は80万人。富士康は深センに広大な敷地の工場を2つ持ち、合計42万人の従業員が働いている。同社は近代的な社員寮、スイミングプールなどのレクリエーション施設が備わっていると説明している。またアップルなどが定期的に行っている厳しい調査にもパスしていると言うが、その労働環境や管理体制には問題があるとの指摘もある。