自動車を1台完成させるために、何点程度の部品が必要か。車種にもよるが、答えは3万~4万点、いやそれ以上になるケースも多い。ドアミラーのフレーム、ブレーキ、トランスミッション等々、内外の自動車メーカーが「アッセンブリー(組み立て)」企業と呼ばれる所以はここにある。

 今回は完成車メーカーにとって欠かせない、特に日本メーカーとは切っても切れない部品会社にフォーカスする。そこから見えてきたのは、日本の産業界の近未来だ。

ケイレツ優良企業が秘かに食指を動かす相手は?

 「◯△社はどうするんだ?」

 「◇◯社は既に見積もりを出したらしい」・・・。

 先月、都内のレストランで証券会社のアナリストたちと会食していると、こんな会話が漏れ聞こえてきた。アナリストたちがカバーする業界は自動車とその関連部品だ。

 彼らが何を話していたのかと言えば、日本でも有数の自動車部品メーカーが、海外大手企業との取引を増やそうと互いの動向を気にしている、という内容だった。

 電装品、ブレーキ、トランスミッションなど、日本の部品メーカーが作る製品は、国内はもとより海外でもその精度の高さが評価されている。既に10年以上前から欧米メーカーとの取引も活発化している。

 さして目新しい話ではないのでは・・・。そう考えた私は、なぜ声を潜める必要があるのか、旧知のアナリストの1人に尋ねた。すると、「大きな潮流になる可能性がある」という答えが返ってきた。

 さらに話の中に入っていくと、その中身は大きな潮流という言葉に符合したものだった。

 あまり引っぱっても仕方がないので、ネタを明かす。

 日本の有力な自動車部品メーカーが熱心に動き始めているのは、対フォルクスワーゲン(VW)のビジネスなのだ。