普段であれば国民の関心を引くことも少ない領土問題がニュースのトップになったという意味で、先週は珍しい1週間だった。特に「竹島」「尖閣列島」をめぐる領土問題については、中国人による魚釣島への無許可上陸や、韓国大統領による竹島上陸など、興奮を感じるようなニュースが並んだ。
竹島、尖閣諸島とは性格が異なる北方領土
しかし、そんな中で日本が直面する領土問題を解説するにあたり、「北方領土」を「竹島」「尖閣」と並列して解説する記事が多かったことにはかなりの違和感を覚えた。
この3つの領土問題を日本の立場から見る時、北方領土は竹島、尖閣列島とは大きくその問題の性格が異なる。
すなわち、北方領土問題のみが、日本、ロシアという当事者両国がその問題の存在を認め、解決に向けて努力する方針を打ち出しているからである。
竹島、尖閣問題は、他国が自らの領土であるという主張をもって、合理的領有権を持つ我が国から島を奪取しようという一方的な動きであり、他国がその領有を断念しない限り解決の方法がない、という点において、あきらかに北方領土問題とは異なる。
そして、何よりも、4島に実際にロシア国民が住んでいて、それゆえにロシアによる実効支配が成立している点も竹島、尖閣にはない、北方領土問題の特別な性格である。
終戦時の人口を大きく超えている北方領土の人口
たとえ北方4島が日本に戻るとしても、ロシアにはその住民を強制的に他地域に退去させる法的手段はなく、従い住民の自由意思で、去るか残るかを選択させる以外ない。
一方の日本には、4島を領土に編入してもそこに住むロシア人を日本人として受け入れるという選択余地はなく、あくまでも在留外国人として遇するしかないであろう。
そんなことを言っているうちに、4島には労働者として中国人、韓国人が大挙上陸、ロシア人を含むそれぞれの島の人口はすでに第2次大戦終了時を大きく上回っている。
北方領土問題と竹島、尖閣諸島とにおける関係国の対日連携は考えすぎとしても、とにかく、北方領土問題に一刻も早く手を打つべき時が到来したと筆者は考えている。
そして、それは歯舞、色丹の日本への返還後、国後、択捉を日露にて共同利用を開始、そこに第三国の勢力が伸長するのを阻止することに尽きる。