水曜日は時々憂鬱になる。本コラムの締め切りが毎週木曜日だからだ。今週はお盆休みと重なったせいか、いつになく良いアイデアが浮かばない。「さて、どうしたものか」と悩み始めた矢先、「尖閣上陸」のニュースが飛び込んできた。さすが中国、書くネタには事欠かない。

 というわけで、今回は予定を変更(?)し、8月15日の香港「民間」活動家による尖閣上陸事件を取り上げる。事実関係の詳細については既存メディアの報道を適宜ご参照頂くこととし、本稿では、いつもの通り、筆者の独断と偏見に基づく仮説を幾つかご披露したい。

「予想外」だった尖閣上陸?

尖閣上陸で逮捕の香港活動家、計14人に 身柄は沖縄本島へ

尖閣諸島に近づく香港の活動家の船〔AFPBB News

 今回筆者にとって最もショックだったのは事件当日の以下の報道だった。

●・・・予想外の上陸だった。魚釣島の周囲には岩場が多数あり、直接接岸するのは難しい。この日の周辺海域は波が高く、近くまで接近しボートを出すのも厳しい。このため、15日夕、領海近くまで迫った抗議船にも「阻止は可能」との見方をする政府関係者らもいた。・・・「止められない」・・・「まさか突っ込んでくるとは・・・」。海保幹部は息をのんだ。(産経新聞)

●・・・海上保安庁によると、魚釣島の海岸は岩場のため船を接舷できる場所がないうえ、この日は台風13号の影響で現場の波が高いことから「上陸はできない」との見方が強かった。しかし、香港の活動家らは船体を傷つけてでも強引に岩場に抗議船を突っ込み上陸。海保の幹部は「まさかそこまでして上陸するとは」と驚きの声を上げた。(毎日新聞)

 確かに「想定外」だったのかもしれない。今回立派な仕事をされた海上保安庁、入国管理局と沖縄県警の方々には敬意を表する。

 だが、あえて問いたい。上陸は本当に想定外だったのか。安全保障と法執行の専門家なら、常に最悪の事態を想定していたのではなかったか。

 安全保障とは「あるべき論」や「机上の空論」ではない。実戦を経験したプロは「想定外」を想定する。筆者は軍人でなく、米軍関係者のような実戦経験もないが、それでも1982年と2004年の2回のイラク在勤で実際の戦闘がいかなるものかぐらいは身をもって知っている。

 そんな筆者がまず考えたのは、今回上陸した連中が「特殊部隊だったらどうするのか」という疑問だった。

 もし彼ら民間人の中に偽装特殊兵が混じっていたら、彼らが本格的に「武装」していたら、日本側はいったいどう対応しただろうか。これは決して「想定外」の話ではない。